【連載】バックアップの真実
第7回 「ストレージガバナンスとは」

-- 今回のテーマ「ディザスタリカバリ」 --

BCP(Business Continuity Plan)、コンティジェンシープラン。

様々な災害、事故に対してビジネスを継続するための計画を立てておくことの重要性は誰しもが認めます。否定はされないでしょう。でも、いったん作った計画をメンテナンスし続けることは大変です。最初の一回は勢いで作ってしまえることがあります。

でも、完全な計画なんて一度で作れるわけがありません。完全な計画を作る、そんな無理なことを言ってはいけません。そんなことを望むと計画そのものに全く手がつかない、最悪の状態になるからです。BCPの類のビジネス課題を考えるときは、考えて、考えて、不完全だから止めてしまうという極端な結論に陥るケースも多いような気がします。じゃあ、どこまでやるのか。 BCPやコンティジェンシープランの課題解決をどのあたりで折り合いをつけるのか、実行力も必要ですが、自分で選んだリスクを受け入れる理性も大事です。お金も人も有限なので、少しずつリスクをカバーして一歩一歩前進しましょう。保険や"助け合い"で何とかなるなら、それも方法です。それでダメならしょうがない、くらいの気持ちでやらないと。。。 (それじゃあダメ? そうか、もう少し突っ込んだ検討をしよう)

ビジネスインパクト分析という考え方があります。事故、災害時のインパクトが実際のビジネスにどのような影響を及ぼすのかを分析しますが、いろいろな要素、業務のうち、どれが一番大事なのか、その認識を社内で一致させておかないと、投資対効果分析の指標がぶれて結論がでません。事故や災害ばかりでなく、日常的に発生する様々なシステム障害に関しても同様な検討が必要です。

これはテクノロジーの問題ではありません。ビジネスそのものの問題です。我々テクノロジーサイドの人間では議論すら難しいことが多くなります。投資と効果は正比例の関係にないことがあるので、この場合は幾ら、こっちの場合は幾ら、と次々とケース毎に費用算定をやることになりSIerとしては閉口するようなこともあります。

インパクト分析の手法として、IBMが開発したCFIA、Component Failure Impact Analysis、という方法があります。ITシステムの障害時の影響範囲と復旧方法を 具体的に把握し、運用改善に結びつけることができます。投資対効果も指標化するのでマネジメントにもわかりやすい、変化していくITシステムを継続的に分析して改善に結びつける良い手法です。

ITシステムを構成するコンポーネントを洗い出して、互いの影響範囲を分析するのですが、人間も大事なコンポーネントなので忘れてはいけません。システム運用が半自動化で留まり、人間の作業を必要とするようなケースでは、人間系に問題があるとシステム運用が止まってしまうことになります。データセンターが 2重化されていても、場所が離れすぎていると、災害時には人が駆けつけることが難しくなります。

人もダブルで2カ所に勤務しているなら問題ないですが、そこまでしっかりと考えている企業は少ないでしょう。さらに、感染力、致死力の強いインフルエンザが流行ると、データセンターへの人の立ち入りが禁止されるような事態もあり得るというレポートもあるので、そんな時はどうしたら良いのか、う~ん、わからない、何か行動指針が欲しい!

そうだ、忘れていた。このメルマガはJDSFのメルマガなので、ストレージのことを少し語っておこう(もう、あまり行数が無いぞ!)。 ITシステムではデータが大事なのは言うまでもありませんが、ストレージ技術の進歩とコモディティ化のおかげで、そこそこの設計上の注意とそこそこのお金(高いか安いかは、う~む、何とも言えない)を払えば、データを失うような可能性を非常に低くすることが出来るようになりました。そういう意味で、データストレージのディザスタリカバリは、技術的にはそれほど難しい課題ではなくなっています。

データとしてのストレージのリカバリは容易になっているので、昔ほど(ほんの6,7年前ですけど)は心配していないというのが正直な気持ちですが、アプリケーションレベルで見ると複雑なサービス連携を行うものが増えているので、業務のリカバリは、よ~く考えておかないと難しくなっているのでは、と感じます。障害時にデータの不整合が発生しても、人間系で何とか出来るような柔軟性があると本当に安心です。無理して何でもハードウエアレベルで解決しようとしたり、ミドルウェア、アプリケーションソフトで解決しようとしないで、柔軟な対応が出来る人間系を利用してスマートに問題解決が出来る。こういう解決方法があると投資対効果もグッと良くなるかも知れません。

まあ、こういうときは、割り切っているから、こんなことが出来るんですけどね。割り切る判断力、決断力も必要です。次回テーマは「CDP (Continuous Data Protection)」。 ストレージガバナンスの最後のテーマです。



DSF データ・マネジメント・ソリューション部会
株式会社エクサ 恋塚 正隆
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