【連載】バックアップの真実
第5回 「ストレージガバナンスとは」

-- 今回のテーマ「仮想化」 --

仮想化。この言葉はつい1,2年前までは、至る所で引っ張りだこでしたが、ここ最近は随分と落ち着いてきました。なぜ?まあ、"なぜ"なんて深刻に考えるほどのものじゃない。こんなことを言うと仮想化の重要性を理解していない!と叱られそうですが、メインフレームも、 UNIXも、MS-DOSも、Macintoshも、Windowsも様々なものを仮想化しながら、それらをOSやデスクトップGUI、アプリケーションに取り込んでいます。今更そんな騒ぐことでもないでしょ。

仮想化の典型のひとつは、みなさんもよく使う"ファイル"という言葉です。ファイルにはいろいろな意味がありますが、技術的な議論をしているときでも、その意味の取り方が人によって違っていて話が食い違うことが時々あります。例えばワードのファイル、というのはどのように理解すれば良いのでしょう。

ディスク装置は磁性体に1/0の状態を記録しているだけなので、そこにメモを書き込んだワードのファイルがそのままドサッと入っていて、手を突っ込むと取り出せるわけではありません。当たり前だ、とメルマガの読者は思うかも知れませんが、世の中の大多数の人は、「ディスク装置って言うけど何なんだ、よくわからない、まあ、ファイルとかいうものになって、要するに便利になっているのね、難しそうだから、よく分からないけど、ん~、まあ、コンピュータはわかんないけど便利そうに見えるし、何となく分かったような気になるように出来ていて、まっいいか」ぐらいにしか思っていない、と私は思っています。

でも、こんな風に、分かったような気にさせてくれて便利になる、という意味では仮想化というのは非常に便利です。分かった気にさせてくれて、しかもそれが自分の意図通りに正しく機能するなら、もう何でも仮想化してくれ、と言いたくなります。本当にITシステムで自分の思うとおりのものを実現するのは大変なんだから。SOA、ESB、BPEL、Webサービス。。。こういったものは複雑なビジネスプロセスやITシステムをサービスの切り口で体系化しようとする意図で生まれてきたけれど、これも仮想化の一種と言えなくもありません。これらのサービスを支えるコンピュータ、ネットワーク、ストレージも仮想化というテクノロジーでサービス化させると便利になります。

サービス化という言葉は、何でも言うことを聞いてくれて便利な奴、という手前勝手な響きがあるので、自分勝手に解釈して都合よく取り込めるといいぞ、となります。

■CPU、メモリを必要に応じて増減させる。しかもアプリの負荷状況をモニターしながら無駄なCPUやメモリが無いように最適化する。サーバが足りなければ自動的にサーバを増やしたり、稼働率が下がったサーバを止めて余ったCPU、メモリを別のサーバに割り当てる。

■L3/L2スイッチでVLAN、ルータを自由に構成する。遠くの場所でも同じネットワークセグメントに居るように見える。

■ディスクを稼働中に増減させたり、知らないうちに違うRAIDに移してしまう。

こういう技術は非常に一般化しました。言葉で言うと非常に便利そうなサービスばかりです。パワーポイントで概念的な絵を描くときは、これらの仮想化が提供するサービスを使うと格好いい絵が描けるので私もよく使います。

使いこなせればITシステムのパフォーマンスを最適なコストで最大化できる。これこそITガバナンスのひとつの目標ですが、世間でよく言うように「言うのとやるのでは大きな違い」があります。

CPU、メモリを最適化するには、最適化のためのポリシーが必要になります。ポリシーが無いのに、CPU使用率が上がったサーバにどんどんCPUを与えていったら、ある時、もっと大事なサーバのアプリケーションが身動き取れなくなって基幹系サービスがダウン、ということになります。仮想化で便利になるとサーバは林立するので、ポリシーを決めて的確に制御できる仕組みが必要になります。このような仕組みを確立する作業は非常に地道な作業で仮想化技術そのものよりもお金もかかって大変そうです。そのような仕組みにお金がかかる、ということを忘れている人、皆さんの周りにいませんか。

L3/L2スイッチも、最近あるお客様で使うので論理設計、物理設計をしてみました。このようなスイッチはいろいろな機能を持っているので論理設計の外観と物理設計の外観が非常に異なるような設計が可能です。こうなると障害があったときに見た目と中身が違いすぎて障害対応が難しくなりそうです。このような観点でシステムを見ると、何事もやり過ぎは禁物、という気がしてきます。仮想化もそんな毒がありそうなので気をつける必要があります。

ディスクの仮想化はロジカルユニット(LUN)や論理ボリュームという技術が基礎になっていると思いますが、非常に歴史があるので考え方そのものはこなれている、と思います。でも、アプリケーションが絡むと何が起こるのかわかりません。大容量のRAIDを使用すると、たくさんのLUN、論理ボリュームができあがるので、それらを間違いなく、本当に間違いなく管理、運用するためには最新の注意が必要になります。仮想化そのものだけでなく、運用管理の仕組みにもそれなりのお金が必要になります。

仮想化技術は非常に便利なことはわかっていますが、それらを使いこなす運用管理も非常に大事です。でも、運用管理というのは地味な言葉なのでなかなか理解してくれない人も多くて、その割には非常に大変な部分です。みなさんも仮想技術は運用と一体でこそ意味があるということをわすれないでください。このメルマガの読者には、このことを身にしみて分かっている方が多いとは思いますけれど。。。

次回テーマは「アーカイブ」です。




DSF データ・マネジメント・ソリューション部会
株式会社エクサ 恋塚 正隆
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