2020年ベスト・エンタープライズ・ストレージ製品

Storage Magazine 2021年2月号より
James Alan Miller

100近くの製品とサービスが、「ストレージ・マガジンとSearchStorageの2020年プロダクト・オブ・ザ・イヤー」のトップの座を争った。どこが金賞、銀賞、銅賞をとったかご覧あれ。

2020年は世界中の企業、組織にとって困難で特異な年だった。COVID-19によって数多くの問題が起こったが、幸いなことに多くのデータストレージベンダーは、卓越したエンタープライズシステム、ソフトウェア、サービスでこの難局に見事に対応した。

「ストレージ・マガジンとSearchStorageの第19回2020年プロダクト・オブ・ザ・イヤー」は、部門ごとにトップ3の製品にメダルを授与した。

我々は、昨秋審査のために、ベンダーに製品の提出を依頼した。選考対象になるためには、製品は2019年9月21日から2020年9月20日までに新製品としてリリースされるか、メジャーなアップグレードがなされていなければならない。コンサルタント、アナリスト、ストレージ・マガジン、SearchStorageの編集者および記者といった業界のエキスパートから構成される我が審査委員会は、次の5つの部門においてメダルを競う47社の最終選考対象を選んだ。

ストレージ ・プロダクト・オブ・ザ・イヤーの5つの部門は以下の通り。

  1. バックアップおよびDRのハードウェア、ソフトウェア、サービス
  2. クラウドストレージ
  3. ディスクおよびディスク・サブシステム
  4. HCIおよびコンポーザブル・インフラストラクチャー
  5. ストレージシステムおよびストレージ・アプリケーション・ソフトウェア

我々の審査員は、受賞者を決めるためにいくつかの要素に基づいて最終選考対象を採点した。技術的革新性、統合の容易さ、使いやすさと管理のしやすさ、機能と価値などである。

審査の結果、プロダクト・オブ・ザ・イヤー史上初めて、複数の金賞連続受賞者が出た(Vast Data、LucidLink、WekaIO)。エンタープライズ・ストレージ製品やサービスは、2002年、2003年にCommvaultがバックアップとDRソフトウェアで、2期連続で金賞を受賞して以来、まったく金賞の連続受賞がなかったにもかかわらずだ。

このベンダー3社が成し得たことは大いに注目すべきだが、他の受賞者も決して見劣りしていない。登場する2020年のエンタープライズ・ストレージ製品の金賞、銀賞、銅賞の受賞者をじっくり見てもらいたい。表彰台には登らなかったが、第2回審査員賞を受賞したスタートアップのベンダーも必見だ。

最終選考対象の指名を受けるのはたやすい事ではない。メダルを獲得するのはさらに大変だ。すべてのメダリストに拍手を! あなたが2020年、データストレージ業界が提供している最高の製品、とどこかで聞いたことがあるものはここに全て網羅されている。

バックアップおよびDRのハードウェア、ソフトウェア、サービス

コンテナの保護、データから最大限の価値を引き出す、この2点が、バックアップおよびDR部門で受賞したベンダーたちのデータ保護の際立った特徴だ。金賞受賞者Kasten Inc.と銅賞受賞者 Portworx Inc.はコンテナの保護の開発に注力したベンダーであり、銀賞受賞者のRubrik Inc.は、データ価値の引き出しに注力した代表的なベンダーである。

Kubernetes市場を対象に開発された、金賞受賞のKasten K10 v2.5は、コンテナデータの包括的管理プラットフォームで、Kubernetesデプロイメントとワークロード用バックアップとリカバリを提供する。最新のバージョンには、モビリティ機能付きクラウド・ネイティブ変換フレームワークとバックアップの拡張機能が入っている。さらに、自動化機能およびアプリケーションをオンプレミス内およびパブリッククラウド間で移動させる機能も提供している。

クラウドデータ管理とバックアップのベンダーRubrikはPolaris Sonarという新製品で銀賞を獲得した。この製品は、バックアップ、コンプライアンス、セキュリティ間の垣根を取り払っているため、ユーザーは本番環境の邪魔をしない形で、センシティブ・データ(機微情報)の発見とレポートができる。Rubrik SaaSプラットフォーム上に構築されたPolaris Sonarは、機械学習と分析を使って、セキュリティ、データガバナンス、コンプライアンス、リカバリ、アジリティを改善しており、GDPRのような個人情報を保護する規則が世界中で施行される時代に、標準的なバックアップ&リカバリ製品を越えた機能を提供している。

バックアップおよびDRのハードウェア、ソフトウェア、サービス

PortworxのPX-Backupは、この部門の銅賞を手にした。コンテナ管理ベンダーによる新製品のPX-Backupによって、企業はS3互換のどのストレージにでもバックアップデータを保存し、単一または複数のクラウド、あるいはデータセンターにデータを戻せるようになった。コンテナのデータライフサイクル管理に加えて、Kubernetesのアプリケーションやカタログと関連するメタデータを簡単にフルでリストアする機能、データアクセスの視認性を高める機能も入っている。

注目の新興ベンダーClumioは、SalesforceがCRM市場で成し得たことをバックアップで実現したい、という野心的な目標を持った最高のスタートアップとして、我々の二回目の審査員賞を受賞した。Clumioによれば、この製品はエアギャップ・プロテクション機能、ラピッド・リカバリ機能、VMware CloudおよびvSphere、Microsoft 365、さらにはElastic Compute Cloud(EC2)、Elastic Block Store(EBS)、Relational Database Service(RDS)などの主要なAmazonパブリッククラウド・サービスを保護する際の柔軟なリストア機能を備えている、という。
註:昨年の第1回審査員賞も、このバックアップおよびDR部門から出ている。

詳細については、SearchStorageの記事、2020年度バックアップおよびDRのハードウェア、ソフトウェア、サービス受賞者を参照。

クラウドストレージ

パンデミックによって、2020年はクラウドストレージの導入が加速した。おそらくそのペースはプロダクト・オブ・ザ・イヤーの他部門のどのストレージよりも速かった。今年の受賞者は、クラウドをストレージ・ツールとして使うに際して、以下の3つの領域に取り組んでいる。

  1. クラウドネイティブ・アプリケーション管理
  2. クラウドNAS
  3. ホステッド・クラウド

受賞者の多様性は、自宅勤務が標準となった時代に、企業が自社の基盤を再評価してデータをクラウド内に保存することに慣れてきたことを反映している。

創業4年目のNASベンダーLucidLink Corp.が、またもこの部門で金賞を受賞した。今回は、Filespaces SaaSファイルシステムv1.24での受賞だ。このバージョンでは、すでにサポートしているクラウドAmazon、Googleの他にMicrosoft Azureが加わった。Filespacesは、CloudianやScalityのようなオブジェクト・ストレージベンダーもサポートしている。共有グローバルネームスペースとして、Filespacesは標準のNASのように動くが、プライマリ・ファイルデータがパブリッククラウドでホスティングされているので、レイテンシが低減する。コンプライアンスとデータ保護のために、アクセス・コントロール、イミュータブル(変更不可)スナップショット、グローバル・ファイルロッキングなどの機能が入っている。

クラウドストレージ

銀賞のRStor Inc.の製品、Spaceのオブジェクト・ストレージは、RStor社のオンプレミスとクラウドベースのPaaSと共に提供される。SpaceはRStorのクラウドの中で最も効率の良い場所にデータをレプリケートおよび保存するためにAIベースのデータ分析を使っている。この製品はまた、データ保護の目的で分散したクラウドPOP(Points of Presence)にオブジェクトを移動したり、データをAWS、Azure、Googleなどの様々なパブリッククラウドに接続することができる。

Portworxは、Kubernetesアプリケーション・ストレージと保護機能を持つPortworx Enterprise 2.6で第三位に入り、銅賞を獲得した。このバージョンは、PX-Store、PX-Secure、 PX-Migrate、PX-DR、PX-Backup、PX-Autopilotという数多くのコンポーネントから構成される。以下のような機能拡張もいくつか行われている。ノード容量リバランス、Kubernetesアプリケーション・ポッドがNFS共有のような外部データソースにアクセスできる機能、エッジ環境に適した軽いKubernetes K3ディストリビューションのサポート、分散KVS etcdが一時的に停止している時でもPortworxストレージを操作できる機能、などだ。

詳細については、SearchStorageの記事、2020年度クラウドストレージ部門受賞者を参照。

ディスクおよびディスク・サブシステム

ディスクおよびディスク・サブシステム部門の受賞者たちは、USBメモリーが如何にエンタープライズ・ストレージシステムおよびストレージアレイへと成長したかを示してくれる。半導体の価格が下がり続けているので、大企業も中規模の企業も(後者は最近増えている)ディスクベースのストレージからフラッシュ・ストレージへの置き換えが容易になってきた。この部門では、ストレージ製品2020年度金賞受賞者3者のうち2番目の金賞受賞者、新しいミッドレンジ・アレイを発表したベンダー、エンタープライズ・ストレージシステムのハイブリッド・アーキテクチャーにNVMe-over-TCPフラッシュ・ファブリックを追加したベンダーが登場する。

Vast Data Inc.は、昨年Universal Storage v2.0エンタープライズ・ストレージシステムで金賞を受賞した。同社は今年も、LightSpeed NASアプライアンスで表彰台の最上段に登った。この製品は、Universal Storageディスアグリゲーテド・プラットフォームを拡張して、プライマリおよびセカンダリ・データのフラッシュ・ストレージプールにしたものだ。LightSpeedの革新的なストレージ・アーキテクチャーでは、NVMeフラッシュ、Intel Optaneパーシステント・メモリー、クアッドレベルセルNAND SSDが、ひとつの製品の中で統合されている。Vast Dataによれば、ハイパフォーマンス・コンピューティング市場向けに、LightSpeedは同社の以前のハードウェアの倍のパフォーマンスを提供している、と言う。

ディスクおよびディスク・サブシステム

エンタープライズ・ミッドレンジ・ストレージアレイのDell EMC PowerStoreは、エンドツーエンドのNVMeとIntel OptaneデュアルポートSSDおよびストレージクラス・メモリーのサポートにより銀賞を獲得した。新たなスケールアウトおよびスケールアップ・システムは、以前のDell _EMCのミッドレンジ・システムのフラグシップ製品Dell EMC Unityより3倍低いレイテンシと7倍のパフォーマンスを提供する。PowerStoreは、VMware Virtual Volumesおよびブロックデータ、ファイルデータに対する仮想ストレージ管理もサポートする。ウィザードによって、他のDell EMCエンタープライズ・ストレージシステムからの移行が、簡単に行えるようになっている。

ペタバイト・クラスのデータを保存しなければならないが、オールフラッシュのストレージを買う予算がない層をターゲットにした、Infinidat Inc.のInfiniBox F6000エンタープライズ・ストレージアレイは、ネイティブのNVMeファブリックのサポート、柔軟な価格設定、冗長化されたレプリケーションなどのシステム拡張を行い、銅賞を受賞した。F6000は使用容量4.1PBまで拡張可能だ。InfiniBox全体に占めるフラッシュの割合は3%で、コールドのディスクベース・ストレージへのバックエンド・アクセスを加速するのに使われる。

詳細については、SearchStorageの記事、2020年度ディスクおよびディスク・サブシステム受賞者を参照。

HCIおよびコンポーザブル・インフラストラクチャー

VDIが初期の強みだったHCIは、多くの社員がCOVID-19のために自宅勤務を始めなければならなかったこの時期、企業に大いに貢献した。もちろん、ここ数年で基盤パラダイムのユースケースはかなり広がってきた。その動きは、今回のHCIおよびコンポーザブル・インフラストラクチャー部門受賞者にも反映されており、それぞれが多様な環境のニーズと先進的ワークロードに対応している。

金賞受賞者のDell EMC VxRail Eシリーズ with Intel Optaneパーシステント・メモリーは、その名が示す通り、ストレージクラス・メモリーとして最新のメモリーを使い(PMem in App Direct Mode)、ストレージキャッシュとして動作し、高速データベースロギングのような並外れたストレージ・パフォーマンスを提供する。VxRail Eシリーズは、このパワーをエッジでのデプロイメントに適したコンパクトなパッケージに入れて、非常にこなれた価格と、様々なワークロードをサポートする機能をつけて提供している。VMwareとの共同開発をすることによって、このハイパーコンバージド・システムは、市場トップのHCIソフトウェアであるVMware vSANと密接に連携している。

HCIおよびコンポーザブル・インフラストラクチャー

Scale ComputingのHE150アプライアンスは、完全な機能を備えたハイパーコンバージド・システムとしては初めて、Intelのスモール・フォームファクター、4インチ×4インチのネクスト・ユニット・オブ・コンピューティング(NUC)のミニコンピューターを使用した点が特に評価されて、銀賞を獲得した。Appleのテレビ・セットトップボックス程の大きさで、エッジに向いているサイズのHE150だが、機能については決して手を抜いていない。追加の機能としては、リモートおよびフリート管理機能、基盤の問題を検知するための機械学習などがある、

銅賞受賞の「パフォーマンス・ビースト」SmartX Inc.のHalo Pシリーズ・アプライアンスは、機械学習開発や金融トランザクションなどのハイエンド・ワークロードをターゲットにしている。Halo Pシリーズは、テラバイト・サイズのPMem、192GB RAM、12.8TBのNVMe、一対の100GbEネットワーク・インターフェース・カードなどで構成され、高価だがお金を出した分に見合った価値をきっちり提供してくれる。VxRail Eシリーズ同様、この製品のOptaneメモリーもApp Direct Modeで走らせることができる。さらに注目すべきなのは、高密度VMサポート、100マイクロ秒を切るレイテンシ、120万IOPS、コンバージド・イーサネットのネットワーク上のリモート・ダイレクト・メモリー・アクセス、非常に高いシーケンシャル帯域のスループット25GB、などである。

詳細については、SearchStorageの記事、2020年度 HCIおよびコンポーザブル・インフラストラクチャー受賞者を参照。

ストレージシステムおよびストレージ・アプリケーション・ソフトウェア

2020年、ストレージシステムおよびストレージ・アプリケーション・ソフトウェア部門の受賞者たちは、クラウドとKubernetesコンテナのサポートに注力した。全ての受賞者が何らかの形でクラウドを使っており、複数のクラウドとオンプレミスのプラットフォーム間でのストレージ操作ができるようになっているが、それぞれが注力するポイントは、以下の様に異なっている。

  1. 高パフォーマンス並列ファイルストレージ
  2. Kubernetesデータ管理
  3. マルチクラウド・データ移行および管理

他のプロダクト・オブ・ザ・イヤーと同様、COVID-19のパンデミックが、既に流行し始めていたトレンド(この場合はKubernetesとクラウド移行)の動きを加速した。

再度金賞受賞者となったWekaIO WekaFSは、AWSで稼働する高パフォーマンス並列ファイルシステムだ。バージョン3.8での数々の目覚ましい機能拡張によって、威風堂々表彰台の最上段に立った。この製品には検証済みAWS Outpostsサポート、Kubernetes Container Storage Interfaceプラグイン、S3オブジェクト・ストレージのスナップショット機能が入っている。WekaAIと呼ばれるもう一つの新機能には、AIの大量データ・インジェスト要求やその他I/Oが集中するワークロードにおいてAIデータパイプラインを高速化するための、SDKおよびカスタマイズ可能なレファレンス・アーキテクチャー・フレームワークが入っている。

ストレージシステムおよびストレージ・アプリケーション・ソフトウェア

第2位のDiamanti Spektra 3.0は、Kubernetesアプリケーションとデータ用データ管理プラットフォーム兼コントロールプレーンだ。最新のエディションでは、データ保護のためにカスタマイズ可能なレプリケーションポリシーとともに、これらの機能を拡張し、統一されたコンソールから、複数のKubernetesクラスター、オンプレミス、クラウド環境にデプロイ、管理、ワークロードの移行ができるようになった。個々のアクセスを制限し、テナントの隔離、粒度の高い視認性の提供など、マルチテナント向けの機能も追加された。

銅賞を受賞したKomprise Intelligent Data Management for Multicloudは、データの保存先がオンプレミスかパブリッククラウドかにかかわらず、データを分析、移行、レプリケートするための管理プラットフォームだ。分析には、ストレージ戦略立案を支援する価格予想機能が入っている一方で、サポート範囲もAzure Files、NetApp Cloud Volumes Ontap、Amazon Glacier、S3互換クラウドオブジェクトストレージ、AWS Elastic File SystemなどのクラウドNASにまで拡張されている。インテリジェント・アーカイビングとリトリーバルのルールは、データ保存コストの最適化と無停止でのデータ移行の目標達成を推し進めてくれる。

詳細については、SearchStorageの記事、2020年度ストレージシステムおよびストレージ・アプリケーション・ソフトウェア受賞者を参照。

著者略歴:James Alan Millerは、受賞経験を持つビジネステクノロジー・ライターであり、雑誌およびオンライン・コンテンツの立ち上げ、開発に広範な経験を持つ編集者。

 

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