データ管理 絶対の危機*訳注1


データはまるで己の意思を持った生き物のように増殖し続けている。この事態をコントロールすべき時が来ている。

Storage Magazine 2017年9月号より
Rich Castagna

 

この状況は、背筋が凍る現代のディザスター映画の要素を全て備えている。企業のデータの年間増加率は百億万パーセントになっており、企業はデータの洪水の中で溺れかけている。そして、あの1958年上映の傑作映画の怪物Blobのように、バイナリーの化け物がデータセンターを抜け出しドア下の隙間をくぐり*訳注2、人間の制御が利かなくなった状態で今まさに出来つつあるデータレイクへと向かう。

やがて、データの大きな塊は壊れ、さらに恐ろしい状況を作り出す。それはまるで、デラウェア州ほどの大きさの氷山*訳注3が南極から離れて不気味に漂っているかのようだ。データの氷山はデータセンターを飛び出し、社会保障番号やクレジット番号をまき散らす。すると、闇サイトの底でうごめいている情報屋が(まるでディザスターものを上映している映画館の売店でポップコーンをすくって売るかのように)これら他人のIDをすくって売り捌く。
想像しただけで背筋がゾクッとしないか?

 

データストレージの急増は本当に起こっている

今の話は少し大げさだったかもしれないが、痛いところを突かれた、と思った読者もいたのではないか。企業は、コンプライアンスのためには全てを削除するか全てを保存すべきか、という議論が記憶のかなたに消え去るとともに、データの中には黄金のお宝が隠されていると信じ込んでしまったようだ。今やデータをため込むことこそが正しく、データの削除はもはや選択肢になりえなくなった。データセンターに自然に集まってくるデータを全て捕らえるだけでは満足せず、もっとデータを集められる仕掛け(身に着ける機器、監視装置、インターネットですべての行動を追跡、など)を考え出す。こうしてデータの保存量はますます増えていく。

我々は集めたデータをどうするか、がはっきり分からないまま、データ中毒になってしまっている。
これは私の想像だが、一部の会社は顧客データの収集、整理、解読に時間をかけすぎる余り、実際に売るべき製品を作る時間がなくなっているのではないか。

 

データ容量は制御不能

データ収集ブームの問題はもちろん、データを置く場所を確保しなければならない、という点だ。そして、それがどこであろうと、データを保護する業務がついてまわる。この二つの課題が意味するのは、(おそらくしこたま)カネがかかるということであり、この0と1の集合体の面倒を見るために他のリソースを割り当てる、ということだ。

通常の状況、すなわち、今のようなデータため込み時代以前でも、データの保存と保護は決して簡単な仕事ではなかった。私がストレージと関わるようになって約15年になるが、ユーザーがよくこういう話を聞かせてくれたのを思い出す(それは実際そんなに昔のことではないのだ)。「ピカピカの新品のストレージアレイを買ったんだ。容量を聞いて驚くなよ、50TBだぜ。」あるいは「100TBだぜ。」これは近い将来出てくるSSD1台分の容量に相当する。今のユーザーなら平然とした顔でこんな風に言うだろう。「うちは管理しなきゃない容量が数PBしかないからラッキーだよ。」

一部のデータセンターや企業の上層部は、データ・ストレージの急増やデータ保護について、ほとんど無関心なため、問題はさらに深刻になっている。ちょうど今、市場調査会社Vanson Bourne によるアンケート結果を見たところだ。スポンサーはセキュリティ・コンサルティングとマネージド・サービスのプロバイダー、NTTグループだ。このアンケートで目を引くのは、1350人の回答者の中で、施行が迫っているEU一般データ保護規則(General Data Protection Regulation: GDPR)が自分たちの会社に影響を与えると思っている人が、たった40%しかいないという結果だ。
だが、今日のグローバル経済でビジネスをしている企業の相当数がGDPRの影響を受けるだろう。そう思わない(そしてきちんと準備をしない)企業は、顧客のデータを危険にさらし、何百万ドルもの罰金を科せられるかもしれないのだ。

 

データ管理は可能

といって、企業がデータの氾濫に対処する製品が存在しないわけではない。データ管理アプリだって、企業のまわりを漂うデータの量を制限管理するシステムだって、市場にはたくさん存在している。コピー・データ・マネジメント(CDM)製品には、アプライアンスタイプと、ソフトウェアだけをインストールするタイプの二種類があるが、どちらもデータセンターに流れ込むデータの量を削減するのではなく、データが不必要に(管理されないまま)増殖するのを防ぎ、データ・ストレージの増大を抑える点で効果的な仕事をしてくれる。

しかし、CDM製品の普及の歩みはのろい。よくCDM製品のカテゴリーを切り開いたと言われるActifioが最初の製品をリリースしたのは2011年だ。それから6年ほど経ち、CDM市場には、Catalogic、Cohesity、Rubrikの他、バックアップ・ベンダーやプライマリ・ストレージベンダーが参入した。それでも、CDMを使っている企業の数はそれほど多くはない。TechTarget Researchによる最新のアンケート「ストレージ市場状況調査」によると、CDM製品を使っていると答えたのはわずか15%に過ぎない。

データをもっとうまく管理しようとチャレンジしているのはCDMだけではない。数年前、Data Gravityが非構造化データ用に革新的な製品Discoveryアレイをリリースした。この製品は、単なるデータ保存などよりはるかに多くの機能を持っていた。データは「インテリジェントに」保存されるため、誰がデータを作ったか、誰がそれを見ることができるか、そのデータはコピーされたか、などの情報が追跡できるようになっていた。この製品は、大半のストレージアレイには及びもつかないほど貴重な情報を提供していたのだ。しかし、何ということだろう、Data Gravityはデータ・ストレージ増大に対して画期的な方式を生み出したにもかかわらず、充分な利益を上げられず、生き残ることができなかった。アプライアンス販売からソフトウェアのみの販売に方向転換した後、Data Gravityは自社の知的所有権をデータセキュリティ会社のHyTrustに売却してしまった。

ストレージシステムは、組み込み型で透過的な、もっともっとスマートなデータ管理を導入しなければならないというのに、Data Gravityが十分な影響力を持てなかったのは非常に残念なことだ。

ITの世界では、一つのチャレンジから別のチャレンジへとさまよう過程で様々なことを学び、かなり優れたソリューションに出くわす、というのはよくあることだ。現在のデータ管理の状況で、我々がもっと注意深くなり、将来を見据えたデータ管理を開発しなければ、次にあなたが見るのは、あなたの会社のデータのかたまりが、データセンターからプカプカと漂い出す光景かも知れない。

 

訳注1:記事原題は"Danger!Disaster! Data management!"だが、記事中で話題にしている1958年上映の映画"The Blob"の日本語タイトル「マックイーンの絶対の危機」を参考にした。

訳注2:映画では未知の地球外生物がアメーバーのように形を自在に変え、ドア下の隙間から侵入してくる。この生物は人間を呑み込みどんどん大きくなり、地球に落下した時点ではソフトボール大だったのが、後半では映画館からあふれ出すほどの大きさになっていく。

訳注3:南極大陸から分離した巨大氷山をさしている。

 

 

著者略歴:Rich CastagnaはTechTarget編集部門バイスプレジデント

 

 

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