Storage Magazine 2015年12月号より
次世代ストレージネットワーク
ファイバチャネル(FC)、Ethernet、Infiniband、などの次世代ストレージネットワークをストレージ技術の本流として盛り上げてきた主な要因は、半導体ストレージと仮想化である。16ギガビット/秒(Gbps)のFCスイッチとアダプターは2016年もホットな技術であり続けるだろう。その一方で、32Gbpsの機器は温まり始める。BrocadeとCiscoは、同社のロードマップの中で32ギガスイッチに注力する。Qlogicは、2016年に32 Gbps/Gen 6にアップグレードできる16 Gbps/Gen 5 FCアダプターを、2015年秋に発表してこの市場に参入した。
Qlogicの製品・マーケティング・企画部門バイスプレジデントVikram Karvat,は、半導体ストレージ・ベンダーは、仮想化、解析、大量トランザクション作業の多くの要求に応えるために、PCI Express 3.0を16レーン提供できる16Gbps4ポートFCアダプターの「垣根を取り払って」いるところだ、と言う。
「このクラスのパフォーマンスは万人向きではないです。でも、必要なときは、必要なんです。Ethernetは、ある分野では非常に優れています。私はネットワークのどれかをえこひいきするようなことはしません。でもね、ファイバチャネルが最適化されてきた業務っていうのがあるんですよ。そこは、ファイバチャネルの独壇場ですよ。」Karvatはこう語る。
Dell’OroグループのSAN・ネットワークセキュリティ・データセンター・アプライアンス市場調査部門ディレクターのCasey Quillinは、16 Gbps FCはこれまでのところ、ほとんどスイッチの話ばかりが語られてきた、と言う。サーバーやストレージについている16 Gbpsポートの数は多くなかったからだ。2016年こそ16 Gbps FCアダプターが「巻き返し」を図り、今年の末には出荷される全FCポートの半数に達するだろうと予測する。
Quillinによれば、Brocadeが「32 Gbpsビジネスで、16 Gbpsのときより良い収益構造を構築するために」FCアダプター会社と話し合っているという。しかしそれでも、32 Gbpsへの移行は16 Gbpsへの移行スピードよりもゆるやかだろう、とQuillinは見ている。
Ethernetベースのストレージネットワークの主流は、25ギガビットスイッチとアダプターになるだろう。これらの製品のポートは、ユーザーが10ギガビットEthernet(10 GbE)で使ったのと同じクラスのケーブルを使えるようになっている。もともとのEthernetのロードマップでは、10 GbEから40 GbEへのジャンプが提唱されていたが、40 GbEは太くて高価なケーブルを必要とする。
ネットワークベンダーたちは、シングルピン25 GbEスイッチとアダプターの規格をつくるために結集した。超大規模なクラウドサービス・プロバイダー市場の需要に応えるためである。新しい25 GbEアダプター上のポートは10 GbEポートがサーバーPCIeバス上で使っているのと同じピン数とレーン数を使っている。ロードマップには50GbEと100GbEまでの拡張が載っており、後者は25 GbEのレーンを4本利用する。
「25 (GbE)から50(GbE)に行く大きな利点は、100に行くまで製品を買い換えなくていい、ってことだね。これは、お金をしこたまかけずに高いパフォーマンスを手に入れる、すごくシンプルな進み方だよ。だから、この市場がこれから伸びようとしてるのさ。次の世代は、25 (GbE)から50(GbE)になるだろう。40ギガは不発で終わるだろうね。」Dragon Slayer Consulting.社長Marc Staimerはこう語る。
ネットワークの選択肢としては、25GbEも40GbEもすでに入手可能になっている。Enterprise Strategy Groupのエンタープライズ・ネットワーク・アナリストDan Condeは、ベンダーサポートと費用面で、25GbEに行くべきか40GbEに行くべきかを決めている、と言う。
一方、InfiniBandは依然としてハイパフォーマンス・コンピューティング(HPC)市場に注力している。Mellanox Technologiesのマーケティング部門バイスプレジデントKevin Deierlingによれば、現在主流を占めている速度は56 Gbpsだが、2016年はHPC、ビッグデータ、Web 2.0アプリケーションが火付け役となって、100 Gbpsへの移行がヒートアップするはずだ、という。
Gartner Inc.の調査部門ディレクターSergis Mushellは、半導体ストレージによって、ユーザーは次世代ストレージネットワークにアップグレードする理由が出来るだろう、と言う。「半導体ストレージは高速のIOPSを提供するので、帯域とレイテンシはこれまでよりもっともっと重要になります。半導体ストレージの価値を得ようと思ったら、より低いレイテンシとより広い帯域は必須です。」
しかしまたMushellによれば、より広い帯域よりも2016年最も話題になるストレージネットワーク動向は、 NVMe (Non-Volatile Memory express) over FC、NVMe over Ethernet、NVMe over InfiniBandをサポートする製品の台頭かも知れない、という。彼は、軽いNVMeのプロトコル・レイヤーは、アレイ宛てに出すコマンドセットを減らし、パフォーマンスが向上する、と語る。
Deierlingは、リアルタイムで利用しなければならないデータが増え続けることによって、ソフトウェア定義のリモートDMA(Remote Direct Memory Access)を使った半導体ストレージの台頭を促すだろう、と言う。半導体ストレージには、RDMAが提供する高速な相互接続が必要であり、これによって初めて高速ネットワークが使えるものになる、とDeierlingは語る。
オブジェクト・ストレージ
我々がオブジェクト・ストレージはホットだ、と最初に宣言したのは2012年だったが、状況は今さらにホットになっている。ベンダーから、より完成度の高い製品が提供されるようになり、具体的な使用事例も増えつつあり、この技術は2016年のストレージの中でこれまで以上に売れそうだ。
ファイルシステムと違って、オブジェクト・ストレージシステムはデータを単一の名前空間に格納する。そこでデータには固有の識別子がつけられ、サーバーがどこにデータがあるかを知らなくてもデータが取り出せるようになっている。単一の名前空間には、通常のファイルシステムが格納できるよりもはるかに大量のメタデータを格納することができる。
管理者にとっての自動化処理や管理作業もずっと簡単になる。最近では、この技術は長期のデータ保存、バックアップ、ファイル共有に使われている。
もっとも、最近までオブジェクト・ストレージの選択肢は限られていた。ほとんどの製品は独自ハードウェア上でRESTベースのプロトコルを使うものだった。
「今、オブジェクト・ベンダーは、従来のシステムを使っているユーザーでもオブジェクト・ストレージのメリットを享受できるようなパッケージ作りをしています。NFS、CIFS、iSCSIのようなプロトコルでのアクセスも提供していますし、より費用効果の高いバックエンドも提供しています。」とCrumpは語る。
一部のベンダーは、ソフトウェアのほうに力を入れている。自社のハードウェアを、安いコストと簡単なインテグレーションで本社のデータセンター用としてユーザーに選んでもらうためだ。例えば、オブジェクト・ストレージ・ソフトウェアベンダーのCaringoは、9月にFileFlyソフトウェアをリリースした。この製品は、ユーザーがデータをオブジェクト・ストレージとファイルシステム間で自由に行き来できる機能を持っている。
「レガシーなデータセンターで数多く導入されるはずです。レガシーなデータセンターは、クラウド・プロバイダーが何をしているかを見ていて、その機能を自分たちのデータセンターに取り込んでいくのです。」Crumpはこう語る。
2015年3月のHGSTによるオブジェクト・ベンダーAmplidataの買収や、同年10月のIBMによるCleversafe買収も、レガシーベンダーが、バックアップやアーカイブの戦略にとってオブジェクトの技術の重要性を認識していることを示すものだ。
オブジェクトの技術の欠点のひとつは、大量のメタデータによって起きるレイテンシだ。しかし、最も一般的な使い方はパフォーマンスがあまり問題にならないところで使うものだ。例えば、シャドーIT(訳註:従業員が会社の許可を得ず、個人所有デバイスやクラウドサービスを仕事で使うこと)を減らし、仕事の生産性を上げる手段として、社内システムのファイル同期・共有の人気が上がってきている。我々はまた、昨年一年の間にビッグデータ・レークへの関心の高まりも見てきた。多くのベンダーがマルチプロトコルサポートを追加したということは、今や低価格で拡張性に富むオブジェクト・ストレージが、ビッグデータを社内で持つのに極めて向いていることを意味する。
「これまで足を引っ張っていた最大の問題は、オブジェクト・ストレージをそれがオブジェクト・ストレージだから、という理由で誰も買おうとしなかったことだ。その問題を解決しなければならなかったが、我々はようやく問題の何たるかを解明できるようになってきた。」Crumpはこう語る。
ソフトウェア定義型ストレージアプライアンス
2年間ずっとソフトウェア定義型ストレージについて語ってきて、どんなにストレージのソフトウェアが優れていても、それを動かすには優れたハードウェアが必要なことに、ベンダーたちも気付き始めた。
2015年、振り子はハードウェアの方に揺れ戻った。我々は、新興のSavage IOが他ベンダーのストレージ・ソフトウェアを動かせるように作ったハードウェア・アレイをリリースするのを見た。EMCの ScaleIOやCloudian HyperStoreなどのソフトウェア定義型ストレージ製品はアプライアンスに搭載されて発売された。Dellは自社のハードウェアで他ベンダーのストレージ・ソフトウェアが稼動させるBlue Thunderプロジェクトで登場し、VMware、Microsoft、Nutanix、Nexenta、Red Hatをパートナーとして協力関係を結んだ。SanDiskは、InfiniFlash IF100をリリースした。同製品は全半導体ストレージアレイで、他ベンダーのソフトウェアが動作する。同社は、最初のパートナーの一社としてソフトウェア定義のストレージ・ベンダーNexentaと提携した。
この動向についていくためのハードウェアは、必ずしも新品である必要はない。Curvature Solutionsはなんと、中古のストレージにDataCore SANsymphony-vをバンドルして販売する予定だ。DataCore SANsymphony-vは、この技術が流行るずっと前からあったソフトウェア定義型ストレージだ。ハードウェアの選択肢が広がるにつれて、ベンダーが厚顔無恥に自社のストレージはソフトウェア定義型だ、という主張も鳴りを潜めるようになってきた。
「ウチのは、絶対ソフトウェア定義型ストレージではない。ウチのにはラックマウント型アプライアンスが入ってるからね。」新興のDatriumが2015年7月にDVX Server Flash Storage Systemを発表したとき、同社の創業者兼CEO Brian Bilesはこう語った。ストレージ・ベンダーがこのように語ったのを、みなさんが最後に聞いたのはいつのことだっただろうか?DatriumはDVXソフトウェアを持っているが、これは同社のハードウェア上でしか動かない。ところが、過去数年間ベンダーはこのような製品をソフトウェア定義型ストレージとして位置づけようと躍起になっていたのだ。
Savage IOはストレージアプライアンスの性能を数ランク上げようと考えた。SavageStor 4800は、12コアプロセッサーがついた4U 48ドライブのシステムで、ファイバチャネル、InfiniBand、半導体ドライブに対応している。この製品は、ハイパフォーマンス・コンピューティング、ビッグデータ解析、クラウドストレージ向けに設計されている。しかし、Savage IOは、ソフトウェア開発をしない。SavageStorは商用ストレージ管理ソフトウェアかLustre、OpenStack 、CentOSのようなオープンソース・アプリケーション上で動かさなければならない。「これは、あなたがこのクラスのパフォーマンスが必要なソフトを使うとき、それと組み合わせることができるフェラーリのパワートレインです。」Savage IOのビジネス開発部門ディレクターのJohn FithianはSavageStorについてこう語る。
EMC ScaleIO Node とCloudian HyperStore FL3000アプライアンス・パッケージのアプリケーションは、もともと自分でストレージを構築したくないユーザーのために、ハードウェアつきのソフトウェア定義型ストレージとして設計されたものだ。そして、明らかにほとんどのユーザーはこうなのだ。
「ストレージの購買者の主流は、今でも統合化されたアプライアンスを求めています。彼らは、ソフトウェア定義型ストレージのメリットを享受したいと思っているものの、ひとつの筐体に全部入っている製品の快適さを捨ててでも、とまでは考えていません。」IDCエンタープライズ・ストレージ&サーバー・プログラムディレクターのAshish Nadkarniはこう語る。
もちろん我々は、ソフトウェア定義型ストレージ、あるいは一般のソフトウェア定義の技術が終わってしまった、とは聞いていない。しかし我々は、実際にデータを格納するハードウェアが今後真っ当な注目を浴びてほしいと思っている。
TechTarget’s Storage Media Group編集部メンバー:
Andrew Burton, Rich Castagna, Garry Kranz, Sonia Lelii, Dave Raffo , Carol Sliwa and Sarah Wilson
(完)
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