VVOLがやってきた。さあ、準備はOK?(後編)


著者:Arun Taneja
Storage Magazine 2015年4月号より

 

プロトコルエンドポイント

1台のESXiホストとストレージアレイ間の通信は、プロトコルエンドポイント(PE)によって処理される。これは、VMとその中のVVOLをオンデマンドでつないでいる転送機構である。ひとつのPEは巨大な数のVVOLに接続でき、LUNの構成上の制限にもわずらわされない(1台のVMwareホストが接続できるLUNは256までだ)。

1台のNFSストレージアレイの環境内では、PEは1つのNSFサーバー・マウントポイントと考えることができる。各VMDKは自分のVVOLを作成する。さらに、各VVOLは自分のストレージコンテナの中に存在する。

 

VASAプロバイダー

VASAプロバイダーは、一般的にストレージアレイ側に実装されるソフトウェアで、ESXiホストとvCenterにストレージアレイ側で使用可能な容量や機能を伝える。
ストレージは自身に関する情報をVASAプロバイダー経由で伝える。すなわち、半導体ストレージ、異なる種類のハードディスクドライブ、キャッシング、スナップショット、圧縮、重複排除、レプリケーション、暗号化、クローニング、その他の機能についてなどである。

トポロジーの情報もこの方法でやり取りされる。そのストレージアレイはファイバ・チャネルだろうか?そうであれば、ポートはいくつか?マルチパス化機能は持っているか?
これらすべての情報はポリシーと仮想ディスクの作成に使われる。もし、ストレージにQoS(訳註:ストレージにおけるQuality of Serviceとは、優先順位付けにより高い性能を維持するサービスを意味する)をサポートする機能が組み込まれていれば、VASAはvSphereとESXiホストにこの機能が使えることを知らせる。VASA 2.0ではVVOLがサポートされている必要がある。

 

 

VVOLの全般的メリット

これまでに述べたように、VMware環境におけるストレージの割当と管理の方法が、VVOLによって大きく変わるということが明確になったはずだ。LUNの考え方はなくなってはいないが、もうストレージ管理者がLUNと関わる必要はない。外部ストレージはすべて抽象化された。すべてのストレージサービスも同様だ。アプリケーションは適正なタイプのストレージと、VMが必要とするサービスだけに紐付けされるようになった。監視と管理はVMセントリックになり、リソースはLUN世界の時代のように無駄遣いされることはなくなった。パフォーマンス管理は正確で、問題点はより簡単に見つけだせる。

アプリケーションのニーズは刻々と変化するので、リソースは自動的かつ切れ目なく追加したり減らしたりできるようになっている。
また、アプリケーションへの変更は不要であり、VVOLの環境に入るためにソフトウェア、ハードウェアの大がかりなアップグレードも必要ない。VVOLに切り替えるときも、ユーザーは既存のアプリケーションを引き続き使える。VVOLへの切り替え前と後の環境は共存し共通のvCenterコンソールから管理できる。
ただし、VVOLにはvSphere 6とVASA 2.0、さらにVASA 2.0をサポートしているストレージアレイが必須である。

 

 

 

既存のストレージアレイはVVOLをサポートできるか?

よく聞かれる質問が、「私が今使っているストレージアレイはVMware VVOLをサポートするでしょうか?」というものだ。ひとことで答えるなら、ノーだ。しかし、質問が「今使っているストレージのアーキテクチャーをVVOL対応用に修正できますか?」というのであれば、答えはイエスだ。相当な量の修正作業が必要となる。アーキテクチャーが15年から20年前のものであればなおさらだ。

VVOL対応のストレージ製品が、今やっと市場に出始めたとはいえ、一度に数機種しか出てこないのはこれが理由だ。EMCはVNXeとVMAX3を手始めに、新機種と新製品をゆっくりと時間をかけて出してくるだろう。HPは3PARシリーズから始めた。私はVVOLへの対応作業の大きさから、ストレージアレイベンダーはフェーズを分けたサポート戦略を立てているだろうと考える。
ここで重要なのはVVOLの割り当て機能をサポートするだけでは十分ではない、ということだ。VVOLの割り当てはできても、利用できるのはサポートされているデータサービスだけだ。

VVOLの環境に移行するということは、決して一回のアップグレードで終わりという話ではない。ユーザーは、どの時点で自社の基盤をアップグレードすべきか、またどの順番で行うかを決めるために、どの機種でどのサービスがサポートされているかという全体像を理解する必要がある。

 

VMセントリックの製品を持っているベンダーはどうなる?

NexGen Storage、Nutanix Inc.、Scale Computing、SimpliVity、Tintriやその他のベンダーは、すでにVMセントリック機能を実装し、製品の出荷とサポートを数年前から行っている。VVOLが世に出た今、彼らの強みはすべて失われてしまうのだろうか?VVOLは彼らの優位性を無くしてしまうのか?「全くそんなことはない」。彼らの全データサービスはすでにVMセントリックになっている。他のベンダーが彼らの機種とデータサービスを全てVVOL対応にするには最低でも1年はかかるだろう。

もうひとつ頭に入れておかなければならないのは、前述のベンダーの多くが極めて強力なQoS機能を製品に実装していることだ。さらに忘れてならないのは、VVOLはアプリケーション用に自動のQoSを用意してはくれない。下層のストレージアレイがそれを実装しなければならない。実装すれば、QoSはVASA経由でvSphereに現れるようになり、ポリシーに適用できるようになる。
市場では、VVOLに最初からQoS機能がついているという誤解がまかり通っている。これは間違いだ。現時点で、高度なQoS機能を持っているストレージアレイはごくわずかだ。

そもそも、この機能を追加するのは相当な作業なのだ。もちろん、なかには例外もあるが。このことから、高機能なQoSを持ったベンダーが今後しばらくは優位性を保つだろうと思われる。

 

まとめ

VVOLは業界全体のストレージ製品に重大な変化をもたらしている。VMwareのVVOLがもたらす利点は無数にあり、その効果は疑いようがない。しかし変化への道は険しく、ほとんどのITの現場はVVOLの理解と、いかに現行の運用に支障をきたさずにこの変化を取り込むかを決めるのに苦労することになるだろう。これからの1年半はITの現場にとってきつい時期になりそうだ。

 

(完)

 

著者略歴:Arun Taneja はストレージおよびストレージ・セントリック技術に特化したアナリストとコンサルタント集団Tanejaグループの創設者兼社長。。

 


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