Hyper-V用にストレージを設定する
著者:David Davis
Storage Magazine 2013年8月号より
Windows ServerとHyper-Vの新しいストレージ機能によって、Microsoftベースの仮想化環境の設定と保守はこれまでよりはるかに簡単になった。
Microsoft Hyper-V Serverは、データセンターに柔軟性、可用性、さらには(可能性として)TCO(全導入費用)の削減を含めた多数のかつ強力なストレージ機能を提供する。Hyper-Vには沢山の異なったエディションがあり、有償、または無償で入手できる。Windows Server 2012の商用バージョン(有償)と無償のHyper-V Serverには、Hyper-V3が入っている事はすぐに分かると思う。Windows8のClient Hyper-Vを除いて、どのエディションを使っていても、以下に解説する全てのストレージ機能を直ちに利用できる。
データセンター・ソフトウェアは貪欲である
Mark Andreesenは、自身の有名な記事「何故ソフトウェアは世界を食べているのか」(The Wall Street Journal、2011年8月)の中で、ソフトウェア会社の製品が世界中の伝統的な産業をいかに破壊しているかを論じている。Hyper-V Serverは、これまで無数のカスタムハードウェアやソフトウェアによって提供され、「データセンターを食べている」ものに取って代わる能力を持ったソフトウェアのひとつである。これは即ち、Windows Server2012 Hyper-Vが、以後に述べるいくつかのストレージ機能を使い---多数のサーバーに対しては統合を利用し、ネットワークデバイス、SANやNASのようなストレージデバイスに対しては、仮想スイッチとファイアーウォールを利用して---これらに取って代わる能力を持っていることを意味する。
Hyper-V Serverの最新版のストレージ機能と、Hyper-V Serverの次期バージョンで予定されている機能によって、あなたのデータセンターのストレージ基盤は、新たな活力を与えられるだろう。
ライブストレージマイグレーション(Live Storage Migration)
物理サーバー上で稼動しているストレージデータを、一つのSANから別のSANへと、ダウンタイムを発生させることなく移動する機能は、先進的なSANの特徴のひとつである。Hyper-Vサーバーは(無償エディションでも)仮想マシン(VM)用として、この機能を持っている。Hyper-V Live Storage Migrationを使えば、ウィザードの指示に従って、稼働中のVMをローカル・ストレージから共有ストレージへ、ひとつの共有ストレージから別の共有ストレージへ、共有ストレージからローカル・ストレージへと移行できる。
ネットワークを経由し大量のデータを移動させる他の技術と同じように、ストレージの移動に要する時間と、同時に行える移動タスクの数は、データのサイズとネットワーク帯域幅に依存している。例えば、10Gb EthernetネットワークのHyper-V Serverは、従来のネットワークより多くのVMを同時に、かつ高速に移動できる。
Shared Nothing Live Migration(無共有型ライブマイグレーション)
無共有型ライブマイグレーションは、当初Hyper-Vだけが提供していた機能である。この機能は、稼動中の仮想マシンのメモリ、CPUサイクル、コンフィグレーション/レジストレーション情報を、ひとつのHyper-Vサーバーから、もうひとつのHyper-Vサーバーに、ダウンタイムなしで移行してくれる。ライブマイグレーションでは、VMのディスクファイルは同じ場所に留まる。以前のエディション(および競合のハイパーバイザの以前のエディション)では、VMは共有ストレージ(SANまたはNAS)上に置かれていなければならなかった。Hyper-V3の無共有型ライブマイグレーションは、たとえVMがローカル・ストレージを使用していても、稼働中のVMをサーバーからサーバーに移すことを可能にしてくれる。VMは、ライブマイグレーションと、ライブストレージマイグレーションを同時に使って効率的に移される。小規模の仮想化基盤は、この方法のおかげで、高価な共有ストレージを使わなくてすむ。
データ重複排除
Windows Server 2012には、ボリューム毎のデータ重複排除が組み込まれている(無償版のHyper-Vには入っていない)。Microsoft社の統計によると、重複排除をかけることによって、VMライブラリーに使われるストレージの容量を80%削減できるという。Windows Serverの重複排除はHyper-VのVMのためにだけあるのではない。このツールは、NTFSボリューム上に保存されたあらゆるデータ(但し、ブートドライブ、ライブVM、ライブSQLデータベースを除く)に対して使用可能であり、ユーザーのホームディレクトリのストレージ容量については20%以上の削減、一般のファイル共有については50%の容量削減を実現する。これによって、購入するディスクとアレイの数を減らせるだけでなく、バックアップするデータの量も減らせる。
SMB 3.0を使用する仮想マシンストレージ
Windows Server 2012では、MicrosoftはVMの保存先としてWindows Server 3.0ファイル共有の使用をサポートしている。言葉を換えると、高価な共有ストレージを買わなくとも、先進的な機能が使える、ということだ。VMを保存するWindows 2012 Serverは、単体のホストから、高度な可用性を提供するフェールオーバークラスターとしてのWindows Server 2012クラスターシステムまで幅広いレンジをカバーする。
Hyper-V レプリカ
多くのストレージアレイが提供している先進的な機能の一つが、LUNのレプリケーション(複製)だ。この機能は良い機能ではあるが(通常高価だ)、多くのHyper-V管理者はより高い粒度を求めている。Hyper-3(無償版を含む)が持つVMレベルでの仮想マシン複製機能は、管理者が複製したいVMを選択でき、管理者にとってはありがたい機能だ。共有ストレージは不要であり(ローカルのストレージを使う事はできる)、レプリケーション・ライセンスを新たに購入する必要もない。災害復旧(DR)用に高価なハードウェアベースのレプリケーションを購入できない中小の企業にとって、この機能は理想的だ。現在のHyper-Vレプリカは、やがてエンタープライズ向けの質を持ったDRツールへと成長していくかもしれない。とりわけ、ひとつのVM(あるいはVMのグループ)の複製の設定を2,3回のポイント・アンド・クリックで行える点は非常に優れている。
Windows Server 2012 Storage Spaces(記憶域)
仮想化基盤(あるいはデータセンター全体)のためのソフトウェア定義によるストレージの考え方を、単なるSMB3.0ファイル共有よりさらに推し進めるべく、Windows Server 2012には記憶域(Storage Spaces)が入っている。記憶域は、ストレージの抽象化レイヤーで、NTFSファイルシステム上で動作し、SMB3.0プロトコルを使ってローカルディスク、共有ストレージ、サーバー内蔵のローカル半導体ドライブから、ストレージプールを生成する。言葉を換えると、記憶域とは、様々なサーバーに散在する異なったタイプのストレージを単一の統合ストレージリソースにまとめる仮想化SANと考えられる。この記憶域をHyper-Vに使うこともあれば、使わないこともあるだろう。記憶域は、Microsoftが改良し続け、これまでユーザーが購入してきた何台もの専用SANアレイをひとつにまとめる可能性をもった、データセンター規模のストレージ・ソリューションである。
Windows Server 2012 Hyper-Vのオフロードデータ転送
仮想化にとって効率は最も重要なものだが、サーバー内のソフトウェアによって実行されるものの中には、効率的でないもの(大容量のデータ移動など)がある。データを処理するのは、そのデータが現在ある場所で行うのが、ベストだ。データセンターにSANを持っているユーザーにとって、Hyper-VはVMを操作する上で役に立つ。Hyper-Vなしでは、VMは一旦サーバーに移し、そこで操作をして、またSANに戻さなければならない。オフロードデータ転送(Offloaded Data Transfer : OPX)は、Hyper-Vに入っているが、ストレージアレイがODXをサポートしている場合のみ利用できる。例えば、ODX対応のアレイで、30GBテンプレートを使い、わずか2分で新規VMを導入した事例を、あるメディアが伝えている。ちなみに、従来のアレイと1GB Ethernet接続では、導入には40分かかり、ネットワーク帯域の99%とホストCPUの1%~5%が使われる。
Windows Server 2012 Hyper-Vの新機能
IT界の多くの人にとって、今でもまだ目新しい感じがしているHyper-V3(Windows Server 2012に付属して2012年9月にリリースされた)が、近々Windows Server 2012 R2と共にアップグレードされる予定だ。Microsoft Tech Ed 2013北アメリカ・カンファレンスにおいて発表されたWindows Server2012 R2には、沢山の新機能が提供されている。その中で、ストレージに関連する機能は以下の通り。
・ | 階層化記憶域(Tiered Spaces)は、記憶域に階層化認識機能を加えたものだ。階層化記憶域は、最もアクセス頻度の高いデータを半導体ストレージ(または、ストレージプールの中で種類を問わず最速のドライブ)にとどめ、使用頻度がより少ないデータは最も速い回転式のディスクに移動しなければならないことを認識している。 |
・ | 圧縮付きライブマイグレーションは、ライブマイグレーションの処理に圧縮機能を加えたもので、これによりHyper-Vライブマイグレーションの処理時間は約半分になる。もしRDMAコントローラーをHyper-V serverに加えれば、ライブマイグレーションの時間は(R2バージョンとWindows Server2012を比べた場合)約70%まで減らせる。 |
・ | Hyper-V Recovery Managerは、MicrosoftのHyper-V Replicaの後継製品である。Hyper-V Replicaは、Windows Server2012 Hyper-Vの中でも、最も人気のある機能の一つだった。Replicaに寄せられるユーザーの高い関心に対して、Microsoftは一ヶ所で複数のサイトのレプリケーションが管理できる一元管理型Hyper-V Recovery Managerを新規にHyper-V R2に同梱する予定だと語っている。 |
この製品がストレージ管理者に意味するもの
ストレージ管理者は、サーバーとソフトウェアの予想以上に速い進歩によって、ソフトウェアがデータセンターの全ての柱を支配する時が来ている事に気付くべきである。近い将来、VMware vSphereやMicrosoft Hyper-Vに入っている機能が、現在のストレージアレイが仮想化基盤に対して提供している機能と同等のものを提供できるようになるだろう。これまで見てきたように、もしあなたが完全な仮想化基盤(あるいはそれに近いもの)を得られるのなら、この将来有望なソフトウェアベースのストレージ製品こそ、まさにあなたが必要としていたものとなるだろう。
著者略歴:David Davisはwww.TrainSignal.comのVMware vSphere and Microsoft Hyper-V video training libraryの著者。エンタープライズIT18年の経験と、vExpert、VCP、VCAP-DCA 、CCIE #9369の資格を持ち、多くの著作がある。
Copyright 2000 - 2013, TechTarget. All Rights Reserved,
*この翻訳記事の翻訳著作権はJDSFが所有しています。 このページに掲載されている記事・写真・図表などの無断転載を禁じます。