SSDテクノロジーのベストプラクティス

著者:Dennis Martin
Storage Magazine2013年7月号より

 

SSDテクノロジーは、もはや裕福なデータセンターの贅沢品ではなくなり、以前よりずっと求めやすくなっている。また、どのように配備するかによって、様々なフォームファクターの選択が可能だ。

 

半導体ストレージ技術は、消費者向け電子製品の世界に大変革をもたらした。携帯電話やタブレットPC等、あらゆる種類の小型消費者向けデバイスに内蔵されていた回転式のディスクドライブは、SSDに置き換えられ、SSDが超薄型ラップトップコンピューターの標準になった。今、データセンターでは、消費者向け電子製品にもたらしたのと同様の恩恵を半導体ストレージがもたらす事への期待が高まっている。

 

いくつかの種類のハードディスクドライブ(HDD)の出荷台数が減っている一方で、SSDの出荷台数はうなぎ上りで、エンタープライズ・アプリケーション分野での導入が静かに進行している。SSDは、高いパフォーマンスを必要とする、データベース・アプリケーション仮想化サーバー、仮想デスクトップ環境や、その他以下のいずれかの基準において高いパフォーマンスを必要とする処理に適している。

 

・秒あたりのI/O(IOPS)で測定されるトランザクションのパフォーマンス

・秒あたりのメガバイト(MBps)で測定される総スループットまたは帯域幅

レイテンシ(ミリ秒またはマイクロ秒)で測定される、I/O処理の往復時間の短さ

 

HDDと同じように、SSDも大きく2つのカテゴリーに分けることができる。エンタープライズSSD(この点に関してはHDDも同様)は、24×7の運用向けとして位置付けられ、通常、優れたパフォーマンス、一般的に長期間の保証と寿命を有しており、ギガバイト(GB)あたりの単価も高い。クライアントSSD(HDDも同じく)は、一般的に24×7の運用には向いていないとされ、通常より大きな容量を有し、GB単価もより安価である。

 

NANDフラッシュSSDと書き込み回数

SSDテクノロジーに使われているNANDフラッシュの物理特性により、NANDフラッシュメディアの各ビットが実行できる書き込み回数には限界がある。SSDの業界及びメーカーでは、1日に全容量を何回上書きできるか、という考え方をする。エンタープライズでのSSDは、毎日数回上書きしても最低5年はその性能を維持できる。クライアントSSDは通常、毎日全容量を上書きしなければ、数ヶ月以上はもつといわれている。テラバイト書き込み(TBW)という用語がこの特性を現す言葉としてよく使われる。この特性ゆえに、エンタープライズSSDは、大量の書き込みが毎日行われる、データベースのようなアプリケーションに適している。

 

フォームファクター概要

SSDテクノロジーは、単体として、あるいはHDDのような他のテクノロジーとハイブリッドとして組み合わせた形で、何種類かのフォームファクターになって市場に出ている。SSDテクノロジーが単体として使われる場合、何ヶ所かのIT基盤のひとつにキャッシュとして実装されたり、独立したデバイスが大容量で全てフラッシュのストレージアレイ、といった形で導入されたり、といった使われ方をされる。ハイブリッドの場合は、SSDテクノロジーはHDDテクノロジーと組み合わされて個別のハイブリッドデバイスの形をとるか、フラッシュに最適化された大容量ハイブリッドストレージアレイの形を取ることがある。

 

ディスクドライブ・フォームファクター

ディスクドライブ・フォームファクターは、HDDテクノロジーが使われているのと同様のコネクターとインターフェースを使用しており、1.8インチ、2.5インチ、3.5インチの「ディスクドライブ」フォームファクターが市販されている。この中でSSDの物理サイズとして最もよく使われているのは2.5インチサイズのものだ。今日、これらのSSDの容量は、単体のドライブで2TBにも上る。SATAとSASはこれらのフォームファクターの中で最も一般的なインターフェースであり、この部分はHDDと全く同じである。最新のエンタープライズSSDは以前のモデルより高いパフォーマンスを提供すべく、12GbpsのSASを使い始めている。SSDのドライブ・フォームファクターは、古いインターフェースのものも入手可能だが、その数は減りつつある。SSDのより高いパフォーマンスを求めて、ドライブ・フォームファクターを収容できるSATA Express、SCSI ExpressNon-Volatile Memory Express(NVMe)などの新しいインターフェースの開発が進められている。これらの新しいインターフェースが製品として出荷されるのは、2013年か2014年になるものと予想されている。

 

PCI Express(PCIe)カード・フォームファクター

もうひとつ、SSDテクノロジーとして普及しているフォームファクターが、PCIeカード・フォームファクターだ。これらのカードはコンピューターのPCIeにぴったり入り、非常に低いレイテンシで素晴らしいパフォーマンスを提唱してくれる。ストレージが直接高速のPCIeバス経由でアクセスできるからだ。エンタープライズ向けのこれらPCIe SSDは、同じ容量のドライブ・フォームファクターのSSDよりも高めだが、通常パフォーマンスはこちらの方が良い。現在、PCIe SSDの最大容量は10TBだが、このSSDに限っていうとコストは普通のサーバーの数倍もする。

これらのPCIe SSDの多くがPCIe 2.0に対応しており、x4またはx8*訳注のスロットを必要とする。新しいカードはPCIe 3.0に対応し、2012年から販売され始めた新しいサーバーで使えるようになった。このSSDのフォームファクターの重要な点は、このカードの物理的大きさである。何種類かのカードは、ハーフサイトかつハーフレングスで、これはほとんどのサーバー、小さなフォームファクターのサーバーにさえもぴったり入ることを意味する。フルハイト、かつ/またはフルレングスのPCIe SSDカードは、より多くの容量を持てるが、全てのサーバーに入れることはできない。
さらに、大容量のPCIe SSDは、PCIeスロットから引き出される標準25ワットを超える、追加電源を必要とする。何種類かのサーバーには追加電源用のコネクターがついてくる。

 

SSD専用フォームファクター

コンパクトなサイズと、要求電力の低さゆえに、SSDは他のフォームファクターでも利用可能だ。それらの多くは、小さなアプリケーション用に設計されたものだ。その中の一つがmini-SATA(mSATA)で、大きさは名刺(またはそれよりさらに小さい)サイズである。MSATAは最大256GBの容量を持ち、SATAのコマンドインターフェースを使用、PCIeスロットに入れることができる。もう一つはμSSD(マイクロSSD)だ。これはマザーボードに直接取り付けられたシリコンチップで、OSからはSATAインターフェースのストレージデバイスとして見える。MicroSSDは、携帯デバイスなどの非常に低電力のアプリケーション向けに設計されている。
エンタープライズ・アプリケーションに向いていると思われるSSDテクノロジー用の興味深いフォームファクターは、デュアル・インライン・メモリーモジュール(DIMM)スロット・フォームファクターだ。これらの製品は、NANDフラッシュでかつ不揮発性DRAMデバイスで、標準のDDR3 DIMMソケットにぴったり入りながら、サーバーに不揮発性のストレージ容量を提供する。この製品は、サーバーが多数のDIMMスロットを使ってエンタープライズストレージを追加する、という面白いやり方を提供するかもしれない。

 

 

ハイブリッドドライブとアレイ

SSDとHDD両方のテクノロジーを同一製品の中で合体させた、ハイブリッドSSD/HDD製品もいくつか出ている。個々のハイブリッドドライブ製品は、一般的にコンシューマー用やデスクトップ用アプリケーションを対象としており、SSDはHDDの前のキャッシュとして使われている。大容量のフラッシュ最適化型ハイブリッドストレージアレイは、(キャッシュではなく)独立した半導体デバイス(SSDまたはPCIeカード)と、それとは分離されたHDDを組み合わせて作られており、エンタープライズ・アプリケーション向けの設計がなされている。このハイブリッドアレイの中では、SSDはキャッシュとして使われるか、プライマリ・ストレージのティアとして機能するように作られている。

 

 

 

使用例と処理の種類

Demartekテスト・ラボにおいて、ほとんど全てのケースでSSDを使用した場合、パフォーマンスの改善が認められたが、この中にはいくつか、SSDテクノロジーとの相性が極めてよい処理がある。データベース処理は、SSDの生でのパフォーマンスの高さだけでなく、レイテンシの低さの故に相性がよい。SSDをキャッシュおよびプライマリ・ストレージとして使用した場合に、大きなパフォーマンス改善がみられた。全てのアプリケーションデータをSSDメディア(プライマリーストレージ)に置くことにより、アプリケーションは非常に大きな恩恵を受けることができる。我々はSSDをプライマリ・ストレージの場所で使う事により、8倍から16倍のパフォーマンス改善を確認した。残念ながら、あなたの環境の全てのアプリケーションにおいて、このような構成を組むのは予算の面から難しいかもしれない。

 

個々のHDDが数百のIOPSを提供するのに対して、SSDは一般的に数千から数万のIOPSを単一の機器で提供する。データベースやWebサーバー環境などの、ある種のオンライン・トランザクション処理(OLTP)アプリケーション環境においては、多くの場合、短時間でのレスポンスが極めて重要だ。一つのトランザクションの中には、前回のクエリーから返ってきた答えに基づいて次のクエリーを送る連続クエリーを必要とするものもある。このような場合、ユーザーへのレスポンス時間は、ストレージがいかに素早く一連のクエリーに答えを返すか、ということが全面的にかかってくる。我々がSSDテクノロジーを使うと多くの場合、レイテンシは百万分の一秒以下になることを確認した。SSDテクノロジーのこの特徴は、生のIOPSやスループットのパフォーマンスより、さらに重要かもしれない。

 

SSDキャッシュとキャッシュに向いている作業

SSDをキャッシュとして導入するのは、可能性として多くのアプリケーション間でパフォーマンスの恩恵を共有する、という利点がある。というのは、キャッシュは、アプリケーションが何であるかにかかわらず、「ホット」なI/Oを改善するからだ。SSDキャッシュはまた、比較的少量の半導体ストレージからはじめるのに良い方法だ。キャッシュは「ウォームアップ」する時間が必要だ。環境にもよるが、数分から数時間もすればキャッシュは、ホットデータで埋まってくる。全体のデータの中の特定の箇所に繰り返しアクセスが行われる「ホットスポット」のある処理は、一般にキャッシュが得意とする処理と考えられ、SSDキャッシュの利点を生かしやすい。キャッシュの性能、バックエンド・ストレージの速度、その他の要因によって異なるが、我々はSSDキャッシュを使うことで、OLTPの処理におけるパフォーマンスが2.5倍から8倍に上がったのを確認している。
SSDキャッシュはIT基盤において、3つの一般的な場所に導入することができる。サーバー側、ネットワーク、ストレージシステムだ。これらのそれぞれが長所と欠点を持っており、何を選択するかは、あなたの必要性によって変わってくる。いくつかの環境では、異なるアプリケーション間でキャッシュを共有する機能が重要になるだろう。また他のケースでは、サーバーあるいはバックエンドのストレージを変えなくていい、という事が重要になるかもしれない。サーバー側のSSDキャッシングは、アプリケーションのレイテンシを大幅に低下させるということに利点を持っているが、アプリケーションを異なるサーバー(例えば、仮想マシン環境のような)に移行する際には、新しいサーバーにキャッシュを入れなければならず、最大限の効果が出るまでにはしばらくウォームアップが必要になるかも知れない。

 

 

著者略歴:Dennis Martinは1980年からIT業界で仕事をしてきた。コンピューター業界アナリスト団体兼テスト・ラボでもあるDemartekの、創立者兼会長である。

訳注:x4、x8は4レーン、8レーンを表しており、1レーンあたりの実効データ転送速度は片方向500MB/secで双方向1GB/sec。PCIe2.0は、x1,x2,x4,x8,x12,x16,x32のレーンに対応している。レーン数により、スロットの長さが異なる。

Copyright 2000 - 2013, TechTarget. All Rights Reserved.