2013年のホットなストレージ技術(前編)
著者:Andrew Burton, Rich Castagna, Todd Erickson,
John Hilliard, Sonia Lelii, Dave Raffo , Carol Sliwa
Storage Magazine 2012年12月号より
以下の6つのストレージ技術が、データセンター変容の中心的な役割を担っていくだろう。
● | 全SSDストレージアレイ |
● | クラウド・ベースのディザスター・リカバリー |
● | スナップショット・ベースのバックアップ |
● | サーバー・ベースのフラッシュ・キャッシュ |
● | 仮想化環境用ストレージシステム |
● | クラウド・ベースのファイル共有および同期サービス |
我々が年に一度お届けする「ホットなストレージ技術」予測の特徴は、今すぐ入手して使い始める事ができる実際のアプリケーションを紹介していることだ。我々は、実験室から外には絶対に出そうにない様々な科学プロジェクトを、大げさにもてはやしたりはしない。といって、それは我々がぱっとしない技術を取り上げている、という訳ではない。それどころか、これらは、半導体ストレージ、ストレージクラウド、仮想化、データ保護などのデータセンター変容の中核となる、最もすばらしい技術の代表格なのである。
2013年、多くのストレージの現場が回転式ディスクを敬遠し、中身全てがSSDのストレージアレイに走るだろう。価格は急降下する一方で、そのパフォーマンスは開いた口がふさがらないほどのすごさだ。半導体はまた、アプリやデータのキャッシュとして、ハードディスク・システムをスピードアップする主要なツールとなるだろう。
廉価な仮想コロケーションと準即時リカバリーを提供するクラウドストレージ・サービスは、多くの企業の災害復旧(DR)計画の中で、重要な位置を占めるようになるだろう。しかし、ファイル共有と同期サービスが引き続き伸びている状況の中、ストレージマネージャー達にとってはクラウドは多少ストレスを感じるものとなるだろう。
夜間バックアップや週次バックアップは、2013年多くの会社がスナップショット・ベースのバックアップに切り替えることによって、バックアップ運用から消え去るだろう。そして、バックアップされる大量のデータは、バックアップ専用に設計された仮想化サーバー環境のシステムに保存されることになるだろう。
全SSDストレージアレイ
半導体ストレージの実装には、価格が大きな障壁になっており、これまではSSDのみで構成されるストレージアレイが普及するのには、時間がかかっていた。しかし、一群の新興ベンダーが半導体ストレージを低価格で販売した事により、全SSDアレイが現実のものとなった。さらに、2013年ストレージ大手メーカーによる振興ベンダーの買収が進めば、全SSDアレイは企業に浸透していくだろう。
端的にいうと、速度へのニーズが半導体ストレージシステムの市場をつくってきた。最上位のティアとなる全SSDアレイは50万から100万のIOPSを実現し、「2番目のティア」のアレイでさえも最上位ティアのアレイの何分の一かの価格で、10万IOPSから20万IOPSを実現する。
「全SSDアレイを考えると、いかに最小の投資で最大限のIOPS、つまりストレージのパフォーマンスをどれだけコンパクトな筐体に収めているかが分かります」マサチューセッツ州Hopkintonに本社を置くTaneja Groupのシニア・アナリスト兼コンサルタントのJeff Byrneはこう語る。
全SSDアレイをGB単価で見ると途方もなく高価だが、IOPSあたりの単価で見ると、その性能が価格に見合ったものであることが分かる。つまり全SSDアレイの最適な対象は、常に高いパフォーマンスを維持する必要があるアプリケーションに依存した環境である。
「それらの環境とは、データ解析、デジタル画像処理、仮想デスクトップ基盤(VDI)、データベース、アプリケーション、金融取引システム、ネットワークゲームサイトなどです。」とByrneは語る。これらのアプリケーションはまた、大量のトランザクションと、極めてランダムなI/Oを持っていることが特長であり、これこそ全SSDアレイが高いGB単価を正当化できるポイントである。
全SSDアレイ・システムは、Kamnario、Nimbus Data、Pure Storage、Solid Fire、Skyera、Tegile Systems、Violin Memory、Whiptail Technologiesなどの新興ベンダーから出ている。EMCはXtremIOを昨年5月に買収し、全SSDアレイの"Progect X"を2013年中頃にリリースする予定だ。またIBMは既に2012年8月にTexas Memory Systemsを買収した時点で全SSDアレイ市場に参入している。
大手ベンダーから出ている全SSDアレイは、やはり高めでGBあたり$16~$20である。中堅ベンダーのストレージアレイはいまだにプレミアム価格を$3~$8に設定して販売している。現在企業が使っている回転式ディスクのストレージ装置はGB単価$2未満だ。
全SSDアレイのベンダー達は、自社の製品コスト低減の課題に取り組み、また最大限の性能とコスト効率を引き出すべく、アレイ全体の設計改良に努めている。
コストを削減する方法のひとつは、高価なシングル・レベル・セル(SLC)の替わりにマルチ・レベル・セル(MLC)を使う事だ。SLC半導体ストレージは、耐久性と信頼性に優れ、10万回の書き込みサイクルの寿命を持っている。MLCの寿命は約1万サイクルだが、ベンダー達はソフトウェアとデータ書き込み方法の改善によって、MLCのパフォーマンスと信頼性を改善してきている。データ削減の技術も、効果的にストレージの使用可能容量を増やす事によって、価格低減に貢献している。
2013年に入り、SSDの価格が下がりMLCが普及するのに伴って、我々はSSDアレイがニッチな環境から従来のアプリケーションへと移行し、さらには回転式のディスクシステムがSSDアレイに置き換えられていくのを目にすることだろう。
クラウドを使った災害復旧DR
クラウド・ベースのDRは中小企業にとっても大企業にとっても、災害に対する理想的な選択肢かも知れない。どんな会社でも手軽にかつ低コストでクラウドストレージ・サービスに会社のコピーを送ることができる。本番の運用が支障をきたした時、サーバーの仮想化を使えば、クラウドの中に新たな仮想サーバーを立て、保存したデータにアクセスすることができる。
「要するに、クラウド・ベースのDRは、データバックアップ専用のストレージシステムのような従来の復旧用資産に代わって、サードパーティーの会社が提供するクラウド・ベースのストレージ環境にそれらの資産を移し替える、ということなのです。」独立系コンサルタントでDR専門家Paul Kirvanはこう語る。
Storage magazineによる最新の購買意思調査によると、企業は依然警戒心を抱きながら少しずつクラウドストレージに近づいているが、回答者の約12%がDR用にクラウドを使用中、と答えている。
また、2012年3月にIBMの委託によりForrester Research Inc.が行った調査では、大企業は社外のクラウドDRベンダーに目を向ける事により利益を得られるだろう、と延べている。マサチューセッツ州に本社を置く調査会社Cambridgeによると、23%の企業が、クラウドDR(Disaster Recovery as a Serviceとも言われる)の拡張またはアップグレードを行っている、または12ヶ月以内に導入を予定している、という。
この調査結果から、回答者の36%がこの技術に興味を示し、回答者の半分がハードウェア/IT基盤における最優先項目と考えていることがわかった。
「復旧用データの一部をクラウドに送っておく、という可能性を調べないようなIT管理者は遅れている。今こそ検討を始めるときだ。」Forresterの調査レポートはこう結んでいる。
DRを外部のベンダーに委託すれば、DR計画を実現するのに必要な基盤の構築や保守から解放される。このようなシステムを自前で構築する社員もリソースも持たない小さな会社にとって、このサービスはありがたい。
Kirvanによれば、クラウドDRへの運用に切り替える前に、データをどのように保存するかを決めておかなければならない、と言う。即ち、クラウドへのレプリケーションを同期で行うか非同期で行うか(これはネットワーク回線が非常に高価である場合、重要な項目になってくる)、現在使っているバックアップテープを保持するのか、どのようなタイプのデータ、例えばデータベースかアプリケーションまたはその他の重要な情報などの中で何をクラウドにコピーすべきか、などを決めなければならない。
「『クラウド・ベースDRサービス』はコスト効率のよい二次バックアップとリカバリーのソリューションを提供してくれます。これは既存のバックアップとリカバリーのシステムを補完するものです。理想のバックアップ戦略は、オンサイトとクラウドDR両方のリソースを組み合わせたハイブリッドな構成を作り上げることです」Kirvanはこう語る。
後編に続く
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