ITアーキテクトのひとりごと
第80回「可用性の限界」
仮想環境を使うようになってから、ネットワークI/FであるNICを物理サーバのNICで冗長化するのか、仮想NICで冗長化するのか、それとも物理と仮想の両方で冗長化するのかを考えるようになった。
ネットワークスイッチを何重にもたすき掛けに構成するのと似ていなくもない。
どうするべきか決まっているわけではないので、担当者のお好み次第だが、2重に冗長化したら、どのくらい可用性が上がるのかを計算して、設計、構築、テストの手間と、障害時のマニュアルを作るコストを吟味する必要がある。
サーバマシンが設置されているデータセンター等の環境全体の可用性も含めて考えると、どこかで割り切ってわかりやすいシステムにしておくことが大事だ。
どんなに立派なマニュアルを作っても、理解が難しいシステムはダメだ。マニュアルが正しいことを立証するのが大変になり、手順の再現性も怪しくなる。
クラウドに実現されたストレージの可用性もどこまで実現できれば納得できるのか考えておく。地獄の沙汰も金次第、無い袖は振れない。。という諺の通り、データが無くならなければOKなのか、瞬時にリカバリしてほしいのかで、コストは桁違いだ。
世の中、自分のあずかり知らないところで何が起こるのかはわからない。多くの機能要素で出来上がっているクラウドというブラックボックスを正確に評価して可用性を検討しきるのは難しい、と割り切っておくほうが無難だ。自分専用ハードで作ったシステムより可用性のレベルが下がっても納得するだけのトレードオフがあったはずだ。
難しいけど、メリット、デメリットを過小評価せず、過大評価もしないで、納得できるシステムを作りたい。
仮想化技術やクラウドは、本来ならばしっかりと考えておくべき、そんな難しい課題に再度向かい合うという試練を与えている。
株式会社エクサ 恋塚 正隆