ITアーキテクトのひとりごと
第70回「大容量ディスク登場で考えてみた。クラウドストレージって何だ。」
シーゲート社の6TBの3.5インチHDDが登場した。バイト数に換算すると 6×10E12 (10の12乗)バイト で、ゼロが何と 12個 も並ぶ。
ディスク装置の仕様書を見ると「「回復不能読取りエラー率(ビット読取りあたり)」=10E15あたり1セクター」 と書いてあるので、限りなくゼロに近いと思っていた読取り不能エラーがいつの間にか無視できないくらいにデータ量が増えているんじゃないかと気になる。
でも、サーバはRAID構成が標準だし、OS側の対応も進んでいる。Linuxでは Btrfs(B-tree file system) というRAID、スナップショットというディスクの大容量化を活かした機能リッチなファイルシステムを選択可能になっている。大容量化を前提とした準備ができているのでこれも心配はなさそうだ。
一般消費者向けのデスクトップPCでは大容量化が進行中だが、いまやデスクトップPC自身がマイナーな存在だ。一方、ノートPCでは大幅な軽量化、低消費電力化が進行中だ。128GB、256GBのSSDを積んで、不足する容量はクラウドストレージに間借りする前提だ。
MSオフィス2013版を使うと、ファイル保存先としてクラウドストレージが選択肢に出てくるが、何の疑問も抱かずに、いつの間にかファイルの保存先がクラウドになっているユーザも多いかも知れない。
クラウドストレージがつながるのはノートPCだけじゃない。デスクトップPCにも、スマートフォン、タブレットにもつながり、シームレスにデバイスを使い分けることが可能だ。
便利な反面、写真のような、世界でたった一つしかないデータが実はクラウドストレージにしか存在しない、という使い方が簡単にできてしまう。
スマホの写真アプリは非常によくできているし、ネットワークも非常に速いので、今見ているこの写真は、スマホ本体側にあるのかクラウド側にあるのかパッと見、わからない。わからなくても便利に使えているうちは問題ないが、障害が発生すると何が何だかサッパリわからないので、スマホのコールセンターにお世話になる。
データがどのくらい安全なのか、"安全"の意味を考えてみる必要がありそうだが、普通の人に説明するのは、かなり大変なことになる。
ちょっとGoogle検索してみると、クラウドに預けたデータを一年に一回、DVDメディアで届けてくれるサービスがある。データを物という形にしてくれるという超安心、安全に気を使ったサービスだ。おぉ、こんな「気配り」のあるサービスがあるなんて、ちょっぴり感動。こんなサービスが生まれた背景に事故やクレームがあるような気がするのは、邪推だろうか。
大事なデータは最低限、ローカルと遠隔地の2か所に保存しておくというディザスタリカバリの基本に従ったサービスとも言えるが、クラウドストレージが日常生活に組み込まれるようになった今だからこそ、大事なデータを守るための方法を身に着けないといけない。
クラウドにあるデータが、預けた人の死後、だれのものなのかという問題に対してはいろいろな回答があるようだが、誰のものでもない、単純に消されてしまうだけ、ということがあるので要注意だ。
物としての本や写真がどんどん無くなって、データとしてだけ存在し、超精密3Dプリンタ、スキャナのおかげで置物、彫刻もデータとしてだけ存在可能になった。
昔は本棚に並んでいる本の種類で、その人の趣味、指向を推し量ることもできたが、電子ブックに全てが収まってしまうと、傍目にはさっぱりわからない。死んでしまうと何もかもが瞬時に消えるかも知れない電子ブックライブラリがあるだけだ。
リアルワールドに存在する本に回帰するのは贅沢な趣味になりそうだ。
株式会社エクサ 恋塚 正隆