ITアーキテクトのひとりごと
第64回「ビッグデータは誰のもの」
国勢調査のデータは今時の言葉であるビッグデータ?とは誰も思っていないようだ。消費動向調査や各種マーケッティング調査もどんなに大量のデータを解析で使っていたとしてもビッグデータだとは思っていない。
そんなことは昔からやっていることだからだ。しかも、国勢調査の結果は瞬時には出てこない。
ビッグデータは今の現実を瞬時に正確にとらえる。未来を予見しない。そんなデータがビッグデータだ。なぜ、どうして、なんていう分析は無用。そんな分析の時間はない。
瞬間的なピークは大きいかもしれないが、決して大量ではないデータも多い。「ビッグ」にはいろんな意味があるようだ。そう、ビッグデータは技術用語ではないので解釈の仕方はいろいろだ。
今なにが売れているのか、誰が買っているのか。それがわかったとして、その瞬間に売れ筋の商品を瞬間的に供給することはできない。物が関係するとそうなる。でも、今その瞬間のトレンドに乗るためには、短時間で生産して、短時間で配送して、その瞬間のトレンドに限りなく近づこうとする。未来はわからないからだ。
未来のことはわからないと割り切って今を正確にとらえるために、膨大なデータを高性能なITシステムで分析するが、採取しているデータは未来を予測しないので、分析が終わったデータはNullデバイスに吸い込まれて無くなる。
ちょっとむなしい気もするが、そんなことができるくらいにデータ取得のコストが下がり続けている。
コストは当然、利益と見合わないといけないが、データ取得のコストが下がり続けているので、利益が小さくても採算が乗ることになる。ビッグデータの活用事例では、コストが大きいが利益も大きいという事例を聞かないのは、そんな理由からだろう。
クリス・アンダーソンの「FREE :無料からお金を生み出す新戦略」という本を少し連想してしまう。
ビッグデータとは別の話(でも、どこかにビッグデータが絡んでいるのではと気になるので書いてみる)。
ヨドバシカメラで。 昨日までは8万6千円だった掃除機が今日からは6万5千円。
今日買うとお得ですよ、と何か申し訳なさそうに店員は言う(店員も大幅に値下げされた理由を知らない)が、二日後には6万2千円かもしれない。購入者は、ドル・コスト平均法を駆使して平均購入コストを下げる、なんていう芸当はできないので、買うかどうかは、その時の、その値段に納得できるかどうかに左右される。
なぜ価格が下がったのか理由が知りたい。
コモディティ化した部品を使うアッセンブリメーカ。 その日その日の調達コストを計算して、完成品の売値、儲けを制御することができる。当然、完成品の値段はしょっちゅう変動するが、タイムセール、クーポンを組み合わせて正確に売上と利益を目標値に到達させる。
はっきり言って、ビッグデータの何が凄いのかわからないが、超ローコスト化したデータ取得コストを武器に人の様子をのぞき見している気味悪さがつきまとう。
株式会社エクサ 恋塚 正隆