ITアーキテクトのひとりごと
第57回「ITのコモディティ化をどうやって乗り越える」
ITがコモディティ化している、という話は聞き飽きた。
クラウド、データセンターもITコモディティ化の先兵だが、ビジネスモデルは不動産販売や賃貸ビジネスのモデルに近い。マンション、アパートは新築で売り出したときがもっとも高くて、後は値段が下がる一方だが、クラウドサービスやデータセンターも同様だ。
コンピュータを手入れをしながら20年使いました、という話は滅多に聞かないし、手を入れて付加価値を高く保つ、という話もあまり聞かない。短期間にスクラップ&ビルドしてSIerはそれなりに忙しいというのが現実だが、それでもSIビジネスもハードビジネスもシュリンクする厳しい現実があるのは深刻な問題だ。
ちょっとでも古いマンション、アパートは人気が落ちるようにデータセンターも、築何年ですか、と聞く人が多い。古いと何がダメなんでしょうか。床の耐荷重が少ない。そうです、最近は高密度実装が多いのでとにかく19インチラックの搭載重量は大きい。大電流がとれない。そうそう、サーバの高密度化と同じ理由でとにかく大電流が流れる。19インチラック1台であまりの大電流が流れるので、電気料金も跳ね上がる。
そんなこんなで、広大な敷地に平屋プレハブのローコストデータセンターを作って、次々とスクラップ&ビルドするのが良い。コンクリートを打った地面にどんと置くなら1トンでも2トンでもOKでしょう。広々と作ったデータセンターなら電力システムも増設が簡単だ。
クラウドサービスは目下花盛りなので、築何年ですか、と聞く人はいない。次から次へとサービスが充実する一方だ。クラウドシステムの運用技術も日進月歩なので黙っていても次々と進化し、陳腐化の心配はいらないのだが、将来どうなるのか分からないのが最大の心配事だ。
こんな状況だと、クラウドの中に作ったサービス、システムを意識的に時々乗り換えていかないと、とんでもないことになりそうなので、のんびりとしてはいけない。忙しいことこの上ないが、これが今の世の中の標準だと割り切らないといけない。
コモディティ化してきたので、そこそこで安いブランドも必要じゃないかと思うが、そこは上手に誰かとタイアップして安物ブランドと思わせない工夫が必要だ。それでも、お金を全くかけていない自営のコンピュータルームよりはましだ。要は割り切りだ。
こうなるとクラウドビジネスもデータセンタービジネスも、商売上手な不動産デベロッパーを見習わないといけない。土地、建物、電気とネットワークを安く仕入れる方法は、付加価値をどうやって付けるのか、投資利回りの目標は何パーセント? 悪い立地条件を克服する方法は、リニューアルのタイミングはどうする。
そして、作ってしまったモノは売り切らないと儲からない。何しろ莫大な固定費がかかっている不動産だから。ショッピングモールにある生命保険のショップ、立派な応接セットを構えたゴージャスな生命保険の販売店舗のようにクラウド商材の売り方も様々になる。
売り切るためには自分自身がデベロッパーにもブローカーにもならないといけない。不動産よりも資産価値の寿命が短いとなると急がないといけない。
株式会社エクサ 恋塚 正隆