ITアーキテクトのひとりごと
第46回 「なぜバックアップに時間がかかる」
なぜバックアップに時間がかかる?
当たり前だ。データ量が増えているんだから!
データ量が爆発的に増大している時代だから、それをコピーする技術であるバックアップに時間がかかるのは当然だ。ベンダーも努力しているが追いつかない。バックアップの究極の目的である、データをリストアすること、そこに無理があるんじゃないか、というバックアップそのものを否定してみる必要もありそうだが、現実的にはバックアップを止められない。
さて、様々な技術が登場し尽くしたかな、という今ではコピー方法はいくらでもある。CDP(継続的データ保護)という技術もあるが、このCDP、最近、音沙汰が無いのは良い知らせだろうか。
PCのデータを印刷して紙で保存しておく、なんていうレトロなバックアップもある。PCが壊れ、たまたま、文書の内容をチェックするために印刷しておいた紙が唯一のバックアップになった、なんていう話もあるので、バカには出来ない。しかし、オフィスには紙を保存しておくスペースがどんどん減っている。
最近は紙を持っているだけで、いけないことをしているという疑いの目にさらされるので、紙はすぐにシュレッダ行きになり、PCにはスキャンしたデータが蓄えられる。爆発的なスピードで増えるデータのコピーには、それに見合ったコストとスピードが要求されており、お客さまの要求を伺って試算してみると「何だ、思ったよりも大したこと無い」時と、「これは大変だ。とんでもないシステムになってしまう」時と極端に明暗が分かれることが多くなった。最近は1280円の12桁の電卓では計算途中で桁不足になることも多いが、今さら関数電卓なんて買いたくもない。
そのコストとスピードに対するユーザの要求に応える形で、Dedupe(重複排除)技術やSnapShot技術、HSM(階層化ストレージ管理)技術、そして、これまでのRAID技術とはひと味違うストレージ装置の低廉化を活かした多重コピー技術(たくさんコピーを作っておけば無くならないだろうという技術?)等、よりどりみどりだが、ビジネスが要求しているコストとスピードとのバランスを考えると、技術、製品の組み合わせは難しい。
適材適所が肝要だが、たくさんの製品を組み合わせると運用が大変なので、運用管理だけをやるASPサービスが欲しくなる。何にでも効く特効薬のような製品は無いし、実演販売、お試し購入は難しい。ユーザの大きな期待を背負うのは大変だ。
だれが背負うのかって? いやいや、SIer、ベンダだけじゃない。究極的にはユーザ自身の課題なんだから、最低でもユーザに半分は背負ってもらわないと。半分以上は自分で背負わないといけないと思っているユーザと一緒に作るシステムは成功率も満足度も高く、みんながハッピーだ。ハッピーなシステム構築で、自分もハッピー。
顧客の満足度向上だけじゃない、双方の満足度向上が幸せなビジネスを産む。こんなやりがいのある仕事が何件出来たか、勇気を持って数えてみよう。
株式会社エクサ 恋塚 正隆