ITアーキテクトのひとりごと
第43回 「ビッグデータ時代の救世主-SSD」
CPUがどんどん早くなり、CPUコア数も今や1CPU当たり二桁になった。CPUコアの数だけだったら48コア搭載マシンが100万円ちょっとで買える。メモリもそれを追いかけて早くなったが、システムバスのスピードが追いつかない。もっと追いついていないのがディスクIOの性能だ。
メモリだって、100GB、200GBのメモリを搭載するだけなら簡単だが、200GBのメモリ空間を透過的に見ようとしたらどうなるかと考える。CPUがシステムバスを乗り越えて遠くのメモリを見ようとしたときのペナルティ、性能劣化は無視できないようだ。ここら辺のところを無視した設計をするとスローダウンするシステムになってしまう。
CPUがマルチコア化したときに、それを活かすようなアプリケーションがあるだろうかと心配されたが、いま、そんな声は聞かれない。マルチコア、マルチスレッドを活かしたアプリケーションを作るのは結構難しいのだが、世の中のアプリSE、プログラマは適応したのだろうか、ちょっと心配だ。もっとも、CPUの省電力機能のお陰で、使い切れない、使われないコアがあると勝手にコアは停止しているので電気代の無駄はない。コアが全開で頑張っているかどうかを心配するような声はとんと聞こえないので大丈夫なんだろう。本当はしっかりとコア単位の稼働率や、使用されているメモリ分布等をモニタして最適化配置をするともっといいと思われるが、そこまでやるならメインフレームに回帰したほうがいい。そこら辺のところを適当(いい加減に)に出来るのが、ある意味、オープン系の良いところだと割り切らないといけない。
そして、トップランナーのCPU、それを追いかけるメモリ。こんな性能競争に加わりたくても加われなかったディスク装置がSolid State Disk(SSD)の登場によってようやく脚光を浴びている。今まで大容量化でしかスポットライトを浴びていなかったディスク装置にとって、久々の晴れ舞台だ。もっとも、ここまで来る間にディスク装置メーカは僅か数社に淘汰されてしまったことを想うとちょっと悲しい。だからタイの洪水なんかで大影響を受けるんだよ、と怒ってみても元には戻らない。
軍事用のような特殊用途では昔からあった超高価な半導体ディスク装置だが、安価なフラッシュメモリのお陰でSSDがコモディティ化に成功した。アプリケーション性能の足を引っ張っていたディスクはSSDの抜群のIOPS性能のお陰で息を吹き返したが、これは、SSDやスピンドル型のHDDを組み合わせたRAIDシステムを管理するファームウェアというアプリケーションの進化のお陰でもある。
そのファームウェアが実現しているであろうシンプロビジョニングやAuto Tieringの威力も抜群だ。公開されているTieringによる性能アップのレポートを見ると本当なのかと驚くばかりだ。
その威力抜群の機能もSSDがコモディティ化するのと軌を一にしてコモディティ化が急速に進行中だ。最近はシステム構成を考えるときに、これらの機能を備えていないRAIDは選択肢にも入らないと言うと言い過ぎだろうか。
ようやく花開いたシンプロビジョニングとAutoTieringも、あっという間にコモディティ化する時代。ある意味、消費者、利用者の時代が来たんだ。これがビッグデータの時代とも軌を一にしたのは偶然ではない。
どんなアプリケーションでビッグデータの果実をもぎ取るのか。ビッグデータの時代は、単にデータが大きいという意味だけではなく、ディスクIOPS性能がようやくCPU性能、メモリ容量、ネットワーク性能とバランスが取れてきた時代を意味する。ストレスのないコンピュータシステムで実現されるアプリケーションが何の役に立つのか、そこが大事だ。ゲーム、SNSだけでは未来が無い。そんな未来、ITには期待していないよ、と言われないように何とかしないと。。。。
株式会社エクサ 恋塚 正隆