ITアーキテクトのひとりごと
第34回 「ITの効率化と真のモビリティが実現した先に待ちかまえるモノとは」
我が家に6個口の節電型テーブルタップがいつの間にか3個配備された。コンセントの1個1個にスイッチがついているので結構ごつい。値段も高そうだが聞くとびっくりしそうなので聞かないことにしているが、1日に何十回もON、OFF、ON、OFFとやっているといつかは壊れる。節電した電気代とテーブルタップのコストが釣り合っているのか検証してみる必要があるが、そんなことをしたら、そんな検証なんかしている場合じゃ無いと怒られそうだ。確かに、今はコストが釣り合っていないとしても、そのうち、しかも近々、釣り合うところまで電気代が上昇するだろう。そのときに慌ててもテーブルタップは売り切れなので、まあ、しょうがない、買っておくことにしよう。
こんなON/OFFスイッチ付きのテーブルタップではなく、スマートグリッド、IPv6、家庭内LANを利用したリモート制御型の家庭用テーブルタップ、消費電力センサー付きなんていう製品もこんな世情が後押しして日の目を見るかもしれない状況だが、どんな家電品が動いているのか、今、家の中に人がいるのか、なんている情報が手に取るようにわかってしまうので、セキュリティには万全を期さないと大変なことになる。今がチャンスとばかりにいろいろなアイデア製品が出てくると思うが、とりあえずは静観して、メーカーや業界団体の言うことは鵜呑みにせずに市民感覚でチェックしないといけない。特にコストが釣り合っているのかをチェックすることが重要だ。よくよく考えるとコストが釣り合っていないのではないか、と思えるようなモノは多いのでトレンドには騙されないようにしないといけない。
さて、我が家の節電だけでなく、企業では節電の一環としてモバイルが注目されているようだ。モバイルやシンクライアント技術を使って、どこにいても仕事ができる環境は簡単に構築できるようになったが、セキュリティ上の課題が残っているということでサーバやストレージはプライベート・データセンターから飛び出せずにいる。セキュリティ上の課題も技術が未成熟というよりも心配事が中心だから、そんなことを言っている場合じゃ無い、ということで、一挙に飛び越えるかもしれない。飛び越えた先はプライベートクラウド、パブリッククラウド、そして、IaaS、PaaS、SaaS、ASPなどが渦巻いた世界だ。
シンクライアントを使って東京でアクセスしていたMyDesktopの物理ロケーションだって、九州でアクセスしたら、どこにあるのかなんてわからない。シンクライアントや無線装置に導入された Geofencing ソフトが位置を検出して、アクセス時間を最適化するために勝手に MyDesktop の物理ロケーションを移動させてしまうかもしれないからだ。こうなれば、アメリカだろうが、中国だろうが、どこに行っても最適な仕事環境が勝手に付いてくることになる。
サーバもストレージも一体どこにあるのか判然としない世界だが、運用管理ツールはネットワークも含めてしっかりと管理してくれるハズだ。そうは言っても、この「ハズ」な世界を設計し、ポリシーを決めて管理しているのは、結局は一番脆弱化もしれない人間なので、2重、3重のチェック体制と機敏なPDCAサイクルを回す能力が求められている。ここにセキュリティ上の課題が集中しているような気がするが、必要に迫られて急速に洗練されるだろう。
こうやって、真のモビリティが実現してしまうと、狭い日本を逃げ出す時には、時差が大きくコストもかかるアメリカではなく、時差が小さい中国や東南アジア、オーストラリアにシンクライアントを持って逃げ出すことになるかもしれない。でも、人が逃げ出すのはコストがかかるので、人は置き去りにされて仕事が逃げ出すことになる。いろいろと考えていたら、こんな結論になってきた。東日本大震災を契機にこんなちょっとした革命が進むと思うと、ちょっと寒い。
株式会社エクサ 恋塚 正隆