ITアーキテクトのひとりごと
第33回 「災害に備えるITは効率的になる」

 

東日本大震災は、私にとっては3回目の大災害だ。一回目は仙台に住んでいた時に遭遇した宮城沖地震で、本当の闇夜ってこんなに暗いんだと思い知ることになった。月も星も無く、市街地のネオンが空にぼんやりと映えることも無いと、わずか5メートル先もよく分からない。防災なんて考えたこともなかったので懐中電灯なしで2,3日寝袋にくるまって過ごすことになった。電気の復旧工事の照明がまばゆいばかりに明るく、電気のありがたさが身にしみる。

 

2回目は同じ宮城県で工場に出張したときに風雪で送電網を支える主要幹線の鉄塔が数十塔倒れるという事故だ。このときは5日間、電気が止まり、新幹線も動かないので東京に帰ってこれない。大停電で仙台市街地も停電、ガソリンスタンドも止まっているような状況で仙台に酒を飲みに行くなんてこともできず、フロにも入れずに寮に5日間泊まることに。

 

こんな大災害が発生しても、被災地から東京に来ると、世の中は何事も無かったかのように時間が過ぎている。世の中はこんなもんだ。災いは身に降りかからないと直ぐ忘れてしまう。

 

そんなこんなで、防災フリークの我が家の奥さんは、ヘルメットから靴下まで取りそろえていた、はずだったが、いざ事が起こってみると、大事なモノ、あったはずのモノが無いではないか。よく聞くと「使ってしまった」、「壊れてしまった」まま補充をしていないので、無い。娘に鞄にいつも入れておくように言って渡した20時間くらい点灯する小型LEDライトも紛失。

 

ダメだ。災害を想定して定期的に身の回りを点検することの大切さが身にしみる。

 

今回の災害で行政も、公共機関も、大小を問わない企業も何が問題なのかが身に染みたはずだが、しっかりと反省し、課題解決を計画して実行に移せるかどうかは、その組織の本当の実力、見識にかかっている。

 

災害に備えている、という企業は非常に多くなっているが、安否確認の連絡網があるだけから、本格的な対策を行っているところまでピンキリだろう。津波で住民関連の情報を失ってしまったところも多いようだが、実は、そんなITシステムだと、災害が無かったとしても、情報を失うかも知れない事故は十分に発生し得たのかも知れない。

 

それにしても電気が無いとITも動かないし、か細い通信網だとリッチなWebアプリもまともに動かない、何よりITが無いと十分な情報伝達、管理を行うこともままならない。そんなことは分かっていたけど、こんなになるとは思わなかったというのは、やはり身に染みないとダメだ、ということか。いやいや、想像力と脅威に向き合う勇気の問題だ。

 

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ITシステムを支えるコンポーネントは十分にあるので、後は災害に備えるための仕組みを作るデザイン力の問題だ。作り上げたシステムは災害に強いだけでなく、きっと効率的なものになるので費用対効果も期待でき、損はないはずだ。

 

そんな近未来に向けて、どんな変革が起こるのか。どんな商機があるのか。全く新しいモノは何もないので、これまで培ってきた実力が問われる。



JDSF データ・マネジメント・ソリューション部会
株式会社エクサ 恋塚 正隆
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