【新連載】ITアーキテクトのひとりごと
第25回「アウトソーシング」
アウトソーシングという言葉が流行ったのは何年前のことだろうか。行きすぎたアウトソーシングを見直してインソースに戻そうという動きもあるようだが、どんなことでも定期的に見直してやり直すのは良いことだ。やりすぎたアウトソーシングをしてしまったので、得したのか損したのか分からない、なんてことはあってはいけないはずだが、反省するだけの余裕があるうちは勉強代だと思うしかない。それでも、本当にアウトソーシングすべき業務は確固たる地位を築いて浸透した。これが社会の進歩だ。
どんな先進技術もサービスも最初の試行錯誤はつきものだが、これら技術、サービスのライフサイクルと自社のPDCAサイクルはうまく同期させてないといけない。自社のPDCAサイクルが早いなら一周遅れで同期するほうがおいしいものにありつける可能性も高い。
今流行のクラウドやSaaSも、アウトソーシングを言い換えただけなので、アウトソーシングの問題点がクラウドやSaaSにも見事に当てはまることに気づいて思わず笑いが漏れてしまった。クラウドやSaaSの「これこれしかじかが問題だ」なんて言っている内容は、今更気づいた、なんていう内容は技術的な側面の違い以外にほとんどない。それでも流行は繰り返す、という訳で、いろいろな人がチャレンジをした10年後(もっと短いかも知れない)には、また揺り戻しが起こる。"揺り戻し"と言うのは反省しました、ということだから、反省しなくてもいいように十分にコントロールできればいいが、コントロールしきれないのが人間だ。
「今、クラウドしない、SaaSしないなんていうシステムはシステムじゃない」という怒濤のような流れに逆らったら、10年後どころか今生きていくのも難しい。もっとも私自身は逆らうつもりは全くない。もっともっとクラウドして、SaaSすることで、もっと洗練されたアウトソーシングサービスを創らないとサービス産業として生き残れないからだ。
10年後に、クラウドやSaaSがどのように言い換えられるのか、どんなクラウド、SaaSが生き残っているのかが最も興味深い。やっておかないと生き残ることもできない、というのが実情だが、こんな消極的な姿勢では、きっと生き残らない、というのも真実なので、なんとも歯がゆい状況が生じる。
揺り戻しが起こるから、その時にも対応できるように、というのは消極的すぎる対応だ。10年後なんて自分もどうなっているのか分からないから、今どうするか、という決断の時の対応には2種類ある。超消極的な対応をして運を天に任せる。積極的に対応して変身することも辞さない。
どっちが生き残りの確率が高いかは自明だろう。最適化しすぎてその後の変化に対応できない、ということもあるかも知れないが、生物の進化と違ってM&Aで変化することもできる。M&Aする方になるか、される方になるかという大きな違いはあるが。。。
株式会社エクサ 恋塚 正隆