【新連載】ITアーキテクトのひとりごと
第23回 「頑張れ、電子ブック!」

紙のような半永久的な記録と自由な書き換えが出来る電子ペーパーを造れないか、と研究が始まったのは数十年前だが、今でもこのような用途に対応できる実用的な電子ペーパーは登場していない。このような電子ペーパーで何百ページもあるような本を作ることはナンセンスなので、当然、電子ペーパーの特性を活かした用途開発が必要になる。デジタルサイネージ(日本語で言うとちょっとかっこ悪いけど "電子看板"?、"電子ポスター"?)のようなものにも使えそうだとは思うが、実際のところ、大型液晶またはプラズマディスプレイや大型の投影システムが使われている。スーパーでは小型の宣伝用液晶ディスプレーが商品説明のために使われている光景はすっかりお馴染みだ。レガシーな紙媒体である大判のポスター印刷も、1枚だけでも簡単に注文できるサービスがあるので、コストパフォーマンスを考えると何でも電子化すればよいとは限らない。

結局、用途開発が出来なければ技術開発も進まないということで、電子ペーパーではなく電子ブックが登場した。

人気沸騰中の電子ブックだが、それ以前からインターネットでは、無料、有料の電子化された本、雑誌、そして情報サービスを閲覧することができる。インターネット以前、そして今でも、紙に印刷された大量の技術雑誌を持っていること自体が困難になってきたので、CD-ROM、DVD-ROMでそれらの情報を保存している。利便性を考えて、更にそれらのデータをPCにもコピーしているので、同じデータが形を変えて至る所に整理されて"散乱"している状態だ。

これだけいろいろな場所に同じデータが散在していると、データが永久に無くなることなんてあり得ない、と納得、確信してしまう。少なくとも個人の扱うレベルでのデータの半永久性は確保されたと信じるに至る。

日々変化するようなデータは、クラウド中のストレージにもデータを保存し、ローカルPCにもデータを保存。更にポータブルストレージにも保存。同期技術でローカルPCにキャッシュされたデータがクラウド中のデータ、ポータブルストレージと同期しあうことでデータのコヒーレンシは容易に保たれる。

巷で売られている本ばかりではなく、自分の持っているデータも電子ブックを使って時々読み返してみたい。電子ブックとノートPCの2台を持ち歩くなんていう事態は避けないといけない。PDFフォーマットだけでなく、一般のオフィスドキュメントがオープンなフォーマットも採用しつつあるのは、そんな時のためにあったはずだ。

電子ブックとノートPCのデータがクラウドストレージとネットワークで同期されるなら、旅行の時は電子ブックだけを持って出かけるなんていうスマートな生活ができるのも時間の問題になりそうなので嬉しい。でも、相変わらず紙媒体でしか流通しないドキュメントも多いので、最近の私の習慣は、「もらった紙媒体は、即座にイメージスキャンしPDF化。紙はリサイクルボックスへ」だ。

このPDF化の時の最大の懸念事項は、スキャナが2枚の紙を重ねて読み込まないかという極めてアナログチックなところにある。IT化するとは言っても、こんなアナログチックなことが最大の懸念事項なんて、なんか嬉しい。

JDSF データ・マネジメント・ソリューション部会
株式会社エクサ 恋塚 正隆
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