【新連載】ITアーキテクトのひとりごと
第8回「取り残されたストレージ」

最近のメールニュースの記事に"仮想化"が載らない日はない。このキーワードが出ているニュースは必ず読むことにしているので、手動でせっせと分類する。この分類作業は1日に何回か実行する日課になっている。分類を自動化すればいい?分類されて「読む予定のフォルダ」に入るニュースは、ちょっと気になるタイトルが修飾で付いている、このサイトは良いニュースを配信することが多い、という、それなりの気ままな基準で直感的に仕分けられたものだけだ。これを自動化しようなんて考えるとメールフォルダがゴミ箱と化す。

見なくても良いニュースは沢山あるし、同じような内容が見た目を変えて何回も配信されるので、分類ミスは問題にならない。同じ内容でも、読もうと思うのか思わないのかを分ける基準は非常に気まぐれだ。コンテンツの価値も、その日の気分で変わる。ちょうど気分が乗っているときに、そのニュースを読むかどうかで、そのニュースのゴミ箱行き、コンテンツフォルダ行きの明暗が分かれる。

コンテンツの価値を決める基準はそれほど客観的なものとは言えないが、コンテンツの価値も時間と共に揺らぐ。

この仮想化のキーワードを持ったニュースは非常に多いけれど、チェックに要する時間はどんどん短くなっている。仮想化というキーワードは陳腐化しつつあるらしい、というよりもコンセンサスを得てきているようだ。仮想化という言葉が安易に使われすぎているということを言う人もいたが、何度も何度も、あの手この手と姿を変えて登場している、この言葉の寿命が長い、ということは、仮想化がITにとって非常に重要な概念であることを示している。そのうちに仮想化が巷に溢れてコモディティ化するのが待ち遠しい。

さて、ストレージの世界にSAN(Storage Area Network)が現れ、SANという言葉が巷に溢れていた頃の記憶は遙か昔の話になりつつある。成層圏を突き破るほどのインパクトがあったはずのSAN は、あっという間にコモディティ化し、すっかりと落ち着いてしまった感がある。FibreChannelとセットで現れたSANは、ストレージデバイスという狭い世界で閉じてしまった。SANという言葉自身は、もっと広い概念を夢のように描いていたはずなのに。

仮想化も単なるサーバの仮想化ですよ、に留まっているとSANと同じようになるところだが、「仮想化をすると、こんな、ちょっと夢のような事ができるようになるよ」というアプリケーションがどんどん広がり、それが実現可能なことがみんなに伝わり、さらに夢がふくらむという良循環のサイクルに入った。

仮想化という言葉がイマジネーションを刺激しやすい言葉だからか。

SANに代表されるストレージ・ワールドのブレークスルーは、ストレージだけを見ていると現れそうにもない。もっとアプリケーションに目を開いて、イケてるアプリケーションを探さないと。

2008年にJDSFが選んだ、イケてるアプリケーションになるかも知れない技術の種(たね)は、De-dupe(データ重複排除)だが、まだまだ育っていないのでどうなるか分からない。アプリケーションが広がって、イケてると思えるようになるかどうかがターニングポイントだ。

仮想化のブームからもWeb2.0のようなトレンドからも取り残されてしまったかのようなストレージという堅い世界が夢見る新しい世界はどこだ。

JDSF データ・マネジメント・ソリューション部会
株式会社エクサ 恋塚 正隆
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