【新連載】ITアーキテクトのひとりごと
第5回 「PCが家電品になる日」

最近は雨と雷はセットでやってくる。雷が怖いわけではないが、バキッという、あまりにも凄まじい雷鳴にはヒヤッとすることが度々だ。我が家は落雷の被害にあったことがあるので、うちの奥さんは雷の音を遠くに聞くとさっそく家中を回って、家電品のコンセントを抜いて回るのがお勤めになっている。我が家の家電品で一番高価な物は多分、自動給湯器だが、このコンセントは屋外にあるので簡単に抜くことはできない。次に高価なものはというと液晶テレビという人が多いと思うが、我が家のテレビは安物だ。我が家で次に高価な家電品はパソコンになる。

なくて困る家電品というのは多いが、パソコン以外の家電品はお金さえ出せばすぐにでも買えて、しかもすぐに使えるという点で著しく異なる。PCのデータをバックアップすることは日常的な作業になっているが、PCのどこに何のデータが保存されているのかを把握するのは大変なことだ。最近PCの更新を2回ほどやったが、異なるPCにデータを移動させるというのは意外なほど注意が必要だ。そもそもデータストアの場所や設定の変更方法なんて滅多にやらないことは覚えていない。世の中には、PCを変更する場合に使うデータ移動ツールが売られているが、自分でやってみると、「なぜ売っているのか」その理由が身にしみてわかる。とにかく大変だ。

新しいPCを買っても、そこにデータを移すのは、普通の人には無理だ。最近はPCのセットアップ作業がサービスとして販売されているので、多分、いや絶対に買ってお願いしたほうが安い。自分がデータ移動に使った時間をお金に換算してみると、そんなサービス費用の10倍を払っても釣り合わないくらいの時間を使ってしまった。しかも、かなり疲れた。

なぜ、そんなに時間がかかるのか。そもそも滅多にやらないことをやるので、どうしたらうまくいくのかを調べないといけない。これも決定版の方法がすぐに見つかればいいが、そうはいかないので、あれやこれやと調べる。調べたら検証しないといけない。無償のツールでも、有償のツールでも、何も考えずに万能なんていうツールはない。OutlookExpressのデータは、Beckyのデータは、iTuneは、WindowsMediaPlayerは、チャットのデータは。。。。調べてみると、こんなにたくさんのアプリケーションがあるんだと、改めて感心してしまう。「マイドキュメント」に入っていれば、そのままそっくりコピーすれば良い、とはいかない。そもそもマイクロソフトはマイドキュメントに個人のデータを集中させて簡単に管理しようとしたはずだけど、守っていないアプリが多い。マイクロソフト自身も守っていないのでうまくいくわけがない。

私はGoogleのカレンダを使っているが、それ以外にもYahooやWindowsLiveのオンラインサービスを使っている。そんなサービスではデータがどこにある、なんて意識したことはないし、データが無くなるなんて考えたこともない。同じようにPCのデータもいっそのことネットワークの向こうにあるクラウドの中に放り投げてしまいたい。データがクラウドの中にあるのが基本で、PCの中にあるのは特別な時だけ。こうなればPCを買い替えた時にデータを移動させるという作業自体が必要なくなる。アプリケーションだって、クラウドの中にあるのが基本で、PCの中にあるのは特別な時だけになると、私のPC ライフは滅茶苦茶EASYになる。

アプリやデータ保存にお金を出すのは全然問題じゃない。今だって使っているお金は毎年毎年相当なものだ。ネットワークにだってお金は出す。そうなれば、ようやくPCも本当の家電品に昇格する。PCと家電品に使われるお金の違いは、PCはサービスに、家電品は物にお金を出すというのが大きな違いになる。

最近は安価なPCがNetPCと呼ばれている。目が少し悪くなっているので、"NotePC" と読み間違えていたのに最近気がついたのが恥ずかしい。NetPCは"安っぽい"という印象があるが、携帯電話の次に使えるツールになってほしい。そうなれば、マクドナルドで100円マックを買い、ついでに100円NetPCを借りて(300円でもいいかな?)、どこでも"仕事モード"になることができる。企業もデータセンターにサーバを預けるようになれば、データセンター群の巨大なネットワークを使ってクラウドコンピューティングが弾けるように広がる可能性がある。アプリケーションやデータを所有する、サーバを所有する、PCを所有する、というのがどういう事なのか、よくよく考えておく必要がありそうだ。
JDSF データ・マネジメント・ソリューション部会
株式会社エクサ 恋塚 正隆
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