【新連載】ITアーキテクトのひとりごと
第2回 「De-dupeとReplication」

Webのリンク切れ。しっかりとしたWebコンテンツ管理システムを使ってWebサイトを構築、運営していればこんなことは発生しない(はず)。最近はリンク切れのコンテンツを掲載しているサイトに出会うことは少なくなってきましたが、リンクを次々とたどって広い範囲でサーチをすると、やはり、リンク切れに遭遇します。

ブックマークのリンク切れも同じです。私のインターネットエクスプローラのブックマークの 量はどのくらいあるのか、と計算してみると、10,000個近くあります。こんなにあると「あれ? いつの間に」と思いながら、時々、リンク切れに遭遇することになります。まあ、10,000個というのは多すぎるので、時々、思いついたように、「今日はこのディレクトリだけ」というように整理しますが、ついつい、URLをたどって"思い出に耽る"ので整理が進みません。

この頃はWebで情報を公開するのが当たり前になっていますが、Webサイトがどんどん変化 していくので、URLを記録しておくという方法はメモとして役に立ちません。次にURLをたどる と無くなっていることが多いので、これは、という情報を見つけると、URLの記録、Webキャプ チャ、必要なら添付ドキュメントのダウンロードをセットにして記録しておく習慣がすっかり身 についてしまいました。こんな作業を日常的にやるためには何か良いツールが必要です。

みなさんも自分なりのツールや、何らかの方法を持っていると思いますが、私はマイクロソフト のOneNoteを使っています。今では、これが無いと仕事にならないくらいに重要なツールに なってしまいました。

ひるがえって、アドレス帳には人へのリンクが記録されていますが、無くなっても意外と困りま せん。"あの時の誰かさん" にどうしてもコンタクトしたい時は、人と人のつながりをたどって、ほぼ確実にコンタクトすることができます。人の海に分散記憶された情報を連想検索で探り当てているようなものです。人の海に記録されたデータは非常にタフで、簡単には削除不可能です。

むかし、事業企画に必要な資料を調査していたとき、某官庁の図書室で「XX年間は非公開」 なる資料を目録から見つけ出したことがあります。まさに見たい資料そのものだったので、"どうしても見たい"と頼み込んでみましたがダメ。でも、資料が作成された、ということは、複数の関係者は資料を持っている可能性が高いということで、人の海をクロールして、その人 を捜し当てました。

このように、人の海に適度に冗長化されて分散配置された情報は、ある時は徐々に記憶から 無くなり、ある時は他の人に記憶が伝搬されることで非常に安全に記録されています。

ITのデータ記録システムには、こんなタフさがありません。「しっかりデータ・バックアップして おく」、「ディザスタに備えて、バックアップを複数サイトに保管しておく」という "1か0の世界" がITの世界なので、ちょっと緊張します。本当です。バックアップが失敗していた、なんていう 現在完了形のような事態が発覚すると血の気が引きます。いまのデータ管理の仕組みは、 十分な配慮を持った思想と設計がないと不安で仕方がありません。ILM(Information Lifecycle Management)システムを導入するとうまくいく、なんて、信用して良いんでしょうか。最後に困る のは自分です。SIerもベンダーも助けてくれません。「本当はうまくいくはずだったんだけど、ちょっとコストを削りすぎて大事なところでしくじっていた」なんてことが無いように自分自身で アーキテクチャを検証しないといけません。

いまはやりのData De-dupeの技術では、コンテンツを一意に識別するIDを利用していますが、本当にコンテンツを一意に識別することができるなら、自分のコンピュータネットワークの至る所 に適度な冗長性を持たせてデータを分散させておくと非常にタフなデータ・バックアップ・ システムができあがるような気がします。そのコンテンツをインデックスするIDを管理するメタ データサーバも分散させて、コンテンツに対するリファレンスがゼロになったら自動的にコンテンツ を削除すれば完璧かな、という気もします。

クラウド・コンピューティングのストレージシステムでは、たくさんリファレンスされているコンテンツ ほどDe-dupeされないどころか自動的にReplication(複製)されることで、その重要なコンテンツ を大事に維持管理する自立調整的な機能が必要かもしれません。
JDSF データ・マネジメント・ソリューション部会
株式会社エクサ 恋塚 正隆
リンクが張られていない、タイトルだけの記事は、最新号のメルマガ記事です。次回 のメルマガが配信された時点で記事にリンクが張られます。メルマガ登録すると次回 から最新記事を読むことができます。メルマガ登録は無料、非会員でも登録できます。登録はこちらから