JEITAテープストレージ専門委員会コラム
「GX:グリーントランスフォーメーションとテープストレージ」
最近ニュースなどでカーボンニュートラルという言葉をよく聞く。温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させることを意味し、日本においては2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにするというものである。温室効果ガスは化石燃料を原料とする電力発電やガソリンを燃料として駆動する自動車、航空機、船舶などの運輸、加工品を製造するような生産活動で排出され、ありとあらゆる経済活動と密接に関係している。これを裏付けるものとして2020年度に国内で排出された温室効果ガスの量は11億5000万トン、これは前年比5.1%減であり、環境省によると1990年の算出を始めて以来最も少なくなったとのことである。もちろんこの減少はコロナウィルスの感染拡大で経済活動が滞ったことによるものである。
2022年に入り、コロナウィルスの感染拡大が一定程度抑制傾向であることから経済活動を正常に戻すことが期待されている。しかしながらコロナ以前の経済慣習と全く同じに戻るとは考えづらく、感染拡大を抑制しつつも2020年以来の経済成長の遅れを取り戻すことが社会全体の命題である。一方で、温室効果ガスの削減、および排出も国際社会で取り決めた事項であり、特に諸外国ではガソリン車新規販売禁止などのルールを定めて先行しようとしている。日本国内でもカーボンニュートラル時代のルールメイキングが必要であり官民一体によるGXリーグ(GX:グリーントランスフォーメーション)が発足した。
GXリーグは、2022年2月1日、経済産業省産業技術環境局から発表されたGXリーグ基本構想によるものであり、1年後の2023年4月からの本格稼働を目指している。2022年3月31日時点の参画企業は国内440社に上っている。GX:グリーントランスフォーメーションは、2050年カーボンニュートラル実現に向け、2030年に国としての温室効果ガス排出削減目標の達成に向けた取組を経済の成長の機会ととらえ、排出削減と産業競争力の向上の実現に向けて、経済社会システム全体の変革することを表す新しい用語である。GXリーグはGX企業と産官学と協働するということを目指しており、温室効果ガス削減に貢献しつつ、外部から正しく評価され成長される社会を目指すとしている。 ※GXリーグ設立準備公式WEBサイト (https://gx-league.go.jp)
テープストレージはデータの記録、保存、読み出しにおいて他のストレージと比較して消費電力が圧倒的に低く、省エネでエコである。そのためカーボンニュートラル時代のデータストレージにますます貢献していくことが期待され、GXリーグのような産官学一体で議論する場にテープストレージによるストレージ省エネ貢献は受け入れやすいであろう。ペタバイトクラスの大容量ストレージシステムを構築する場合、ディスクのみで全てのストレージ容量を確保せずにあまり使用しないデータはテープに保存するようにすると、場所・電気・ハードウェア代を考慮したTCO (Total Cost of Ownership)を8~9割削減することができるうえ、電力消費に伴う二酸化炭素排出も約95~98%削減することができる。近い将来、GX:グリーントランスフォーメーションという経済社会システム変革をテープストレージによる省エネ貢献により下支えすることが期待され、ますますテープストレージの動向に目が離せないのではないか。
一般社団法人 電子情報技術産業協会(JEITA) テープストレージ専門委員会
http://home.jeita.or.jp/cgi-bin/about/detail.cgi?ca=1&ca2=292
本内容にてご質問などございましたら、JDSF事務局経由でお願いいたします。
2022年9月「家族との会話からテープストレージについて考えてみました」
2022年8月「保存データの大容量化とテープストレージの関わり」
2022年7月「データセンターとテープストレージ」
2022年6月「GX:グリーントランスフォーメーションとテープストレージ」
2022年5月「身近なところでのデジタルデータの増加」
2022年4月「最新テープストレージによるITサステナビリティ(持続可能性)の改善」
2022年3月「磁気記録の可能性 磁気テープの記録容量はまだまだ向上する」
2022年2月「低コスト・安心・安全なテープストレージを手軽に活用してみませんか」
2022年1月「大切な情報資産を後世へ引き継いでいくためには」
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