JEITAテープストレージ専門委員会コラム
「テープストレージの省エネルギー効果」

年々、地球温暖化は深刻な問題として挙げられ、その対策を急ぐことが全世界の共通課題となっています。この問題に対して日本政府は国をあげた対策を行い、二酸化炭素(CO2)などの温暖化ガス排出量を2030年度にマイナス26.0%(2013年度比)に削減する目標をあげました。
今回はITシステムに焦点を置き、テープストレージ利用によるCO2削減への効果についてご説明します。

まず、ITシステムにおける低消費電力化およびCO2排出量の低減を実現する手法には2つのアプローチがあります。
一つは、ITの活用により流通や制御など経済活動の過程で必要とするエネルギーの利用効率を高めて環境改善を推進していくことで、これは、「Green by IT」と言われています。
もう一つは、IT機器自体の省エネを推進する「Green of IT」と言われる手法です。情報量とその処理量は拡大の一途にあり、今後も生成されるデータ量は爆発的に増加していくと考えられています。このような状況においては、ストレージ製品の低消費電力化を推進し、さらにストレージシステムの構成や運用を見直し、最適化を図ることが消費電力の削減に効果的であり重要となります。
さて、テープストレージは、ディスクストレージなどのオンラインストレージに比べアクセス性能では劣るものの、記憶容量あたりのコスト、体積、消費電力などにおいて優れています。

特に消費電力に関しては、カートリッジテープへの電源供給は不要なため、使用されていないカートリッジテープの消費電力は実質0であり、ディスクストレージと比べるとエコな製品と言えます。ここまでのお話は良く聞く話と思われますが、では「具体的にどの位テープストレージは省電力なのか?」を説明できる方はほとんどいないのでは?

それでは具体的な数字をご説明していきたいと思います。

まず例として、一年間に480TBのデータをテープストレージに保管した場合と、ディスクストレージに保管した場合のCO2排出量は
テープストレージ=0.59t/年  ディスクストレージ=5.96t/年
※テープストレージはLTO7ドライブ使用時
※ディスクストレージは、ニアラインHDD使用時
となり、ディスクストレージの10%にも満たない数字になります。
前述したように、カートリッジテープには電力は不要なため、容量が増えてもCO2排出量は大きく増えることはないので、容量が大きければ大きいほど、ディスクストレージとの差は大きくなります。

CO2排出量が小さいということは、もちろん消費電力が少ないことになります。では、テープの消費電力がどの位なのかを見ていきましょう。先ほどと同様に、一年間に480TBのデータを保管した時に掛かる消費電力量は
テープストレージ=920kWh/年    ディスクストレージ=10,162kWh/年
この差を電気料金でみると、年間の電気代が20万円以上も違ってきます。この消費電力量の差は、保管データ容量の増加に比例して増えていきます。

このようにデータ保管期間が長く、データ容量が大きくなればなるほど、テープストレージの使用はコスト的な効果があると言えます。

しかしながら、全てのデータをディスクストレージからテープストレージに移行できるものではありません。
AIやIoTといったデータを利活用する社会では、分析や編集などで頻繁にアクセスするデータもあれば、新たな活用や再利用するために保管している様なほとんどアクセスしないデータもあります。これら全てのデータを一つのストレージに保管し続けると、データ容量が膨大に増え、従来型のストレージではコストへの負担が増加していきます。
そこで、データの利用シーンに合わせたデータ保管の仕方を考えていく必要があります。
例えば、頻繁に利用されるデータはフラッシュストレージやディスクストレージに保管、使用してから時間が経ち利用されなくなったデータや、アクセス頻度がほとんどなくなったデータはテープストレージに移行するような、「データ階層管理システム」によるハイブリッドな使い方をすることで、ストレージに掛かるトータルなコトスを削減でき、地球温暖化防止に寄与することができます。
また、テープストレージのCO2排出量の算定・集計のアンブレラ的手法について、同協会(JEITA)のグリーンIT委員会、IT省エネ貢献専門委員会にて作成した「ITソリューションによるCO2排出抑制量定量化のためのフレームワークに関する報告書」にも記載されていますので、是非、ご覧ください。

 

参照URL:
https://home.jeita.or.jp/greenit-pc/contribution/index.html
https://home.jeita.or.jp/greenit-pc/contribution/pdf/it-framework.pdf


一般社団法人 電子情報技術産業協会(JEITA) テープストレージ専門委員会
http://home.jeita.or.jp/cgi-bin/about/detail.cgi?ca=1&ca2=292
本内容にてご質問などございましたら、JDSF事務局経由でお願いいたします。

 

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