JEITAテープストレージ専門委員会コラム
「テープの技術革新と記憶容量向上の歴史」

今から66年前の1951年、アメリカ合衆国国勢調査局に量産初のコンピュータであるUNIVAC (Universal Automatic Computer) が出荷されました。このコンピュータには5200本あまりの真空管が使われていたそうです。実はこのときの不揮発性記憶装置は磁気テープ装置(テープストレージ)でした。
一時期ハードディスクストレージの低価格化により「テープストレージの役割は終わった」と揶揄されたこともありましたが、近年のビッグデータ時代、低コスト・省エネストレージとして再注目されつつあるテープストレージ。今回はテープストレージの技術革新と記憶容量の向上についてご紹介させていただきます。

 

<テープの黎明期: ストレージの主役>

1951年はUNIVAC(現Unisys)社から世界初の商用記録磁気テープが誕生し、翌1952年には3M社が開発したModel726テープユニットをIBM社が発表しました。Model726はRead While Write機能やCRCなどエラー訂正機能を実装していました。またテープメディアも下地層PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムに記録層を塗布する構造が採用されました。現在まで続いているテープストレージのベース技術はこの時代には確立され、製品に実装されていました。
最初のハードディスクストレージが登場したのは1956年。ただ当時はまだ記憶容量・消費電力が実用的ではなく、このあとしばらくの間テープストレージはストレージ装置の主役でありました。
1950年代当時のテープメディアは直径約30cmのオープンリール型で、記憶容量は4.8メガバイト/巻でした。後にGCR方式記録で160メガバイト/巻へと進化し、2000年代まで利用されることになります。

 

<小型大容量化、ミッドレンジ製品の普及>

1980年代になると市場環境に変化が訪れます。HDD(ハードディスクドライブ)の技術革新によりディスクストレージ市場が拡大し普及が進み、テープストレージはデータのバックアップやアーカイブ、データ交換媒体としてのオフサイトでの使用が主へと変わっていきました。 ただ、この環境変化はテープストレージを新たな進化に導きました。HDDに先駆けた薄膜ヘッドの採用、1/2インチシングルリール、ヘリカルスキャン等による高密度・小型化を進めていきました。IBM社の3480やDEC(現HPE)社のTK50(後のDLTへ進化)、Exabyte社の8mmビデオをもとにしたデータ記録用システムはこの頃に誕生しています。
IBM3480テープメディアは外形およそ10cm×10cmのカートリッジ型で、記憶容量は200メガバイト/巻でした。

 

<テープライブラリとローエンドへの展開>

1990年代になると、テープストレージに対する市場環境はますます厳しくなりました。パーソナルコンピュータの普及によってHDDの急激な大容量・低価格化によりHDD市場はさらに拡大していきます。テープストレージにはさらなる大容量・高速化、また運用軽減が求められ、テープライブラリによる大容量、自動化が進み、ミッドレンジ・オープンシステム向けとしてDLTが普及したのがこの時期です。
一方で高密度記録のヘリカルスキャンの小型装置で低価格帯市場への進出も進み、より小型のカートリッジを使用するDAT(DDS)、AITなど、数多くのテープ規格が普及することになりました。

 

<LTO規格の登場>

2000年代になると、各社のテープ規格やフォーマットの互換性問題を解決させるために、業界共通のオープンフォーマットを確立しようという動きが起り、HP(現Hewlett Packard Enterprise)社、IBM社、Seagate(現Quantum)社の3社により共同開発されたオープン規格のLTO(Linear Tape-Open)が登場しました。
LTOはコンソーシアムで各社間の互換性検証がされ、約2年周期の世代アップが明記された長期Roadmapが示されたことで市場に安心感を与え、現在テープストレージのデファクトスタンダートとなっています。
2015年に出荷された第七世代LTOは、およそ10cm×10cmのカートリッジで6テラバイト/巻の記憶容量を有しています。長期アーカイブや大量データを扱うクラウド・コンピューティングやエンターテイメント・メディア業界において、大容量テープストレージは大きな活用の場になってきています。

 

<今後の展望>

現在LTOは第十世代(48テラバイト/巻)までRoadmapが公表されています。
2015年4月、富士フイルム社とIBM社は記憶容量220テラバイト/巻を実現する技術を、また2017年8月にはソニーストレージメディアソリューションズ社とIBM社は記憶容量330テラバイト/巻相当の技術を共同開発したと発表しました。登場から66年たった現在であってもテープストレージの技術革新は止まっていません。
まだまだ‘のびしろ’があるテープストレージから目が離せない状況が続いています。

 

※容量は全て非圧縮時の容量で記載
ギガバイトは1000メガバイト
テラバイトは1000ギガバイト

 

一般社団法人 電子情報技術産業協会(JEITA) テープストレージ専門委員会
本内容にてご質問などございましたら、JDSF事務局経由でお願いいたします。

 

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