JEITAテープストレージ専門委員会コラム
「ビッグデータは本当にビッグになるのか?
永遠の命でデータはどうなる?」

 

消費電力の問題は残るものの、現在のペースで人工知能の開発が進むと、2029年には人工知能が人間の知能を上回るという説がある。そう遠くはない話だ。倫理的な問題はあるにせよ、好奇心旺盛な科学者目線では非常に興味をそそられるテーマである。 その時、今の脳内の情報をそのまま人工知能に移植できれば、理論的には永遠の命を手に入れることができるのではないか? そう考える人たちもいるようだ。 人類始まって以来、「永遠の命」は常に多くの人、特に権力者、富裕層の大きなテーマであった。それにより命を落とすもいれば、現在でも冷凍保存されている人たちもいるという。

 

クローンでは性格、人格までも再生できない

一方、自分の遺伝子情報から、クローンを作れば同じ人格が形成できるという考えもあるかもしれない。しかしそれはどうだろうか? 人格の形成は育った環境の影響が非常に多いと考えられている。つまりアインシュタインの遺伝子があったとして、彼のクローンを作ったとしても、あの相対性理論は出てこないかもしれない。幼少時代の劣等感がなにか関連しているかもしれないし、「友人の何気ない一言が今ある大きな発見につながらなかったのだ」という人がいても、誰も否定はできないだろう。

 

人格再現のために

前回紹介した、ダブリンシティ大学 ガーリン・カサル教授が進めているLIFE LOG収集のプロジェクトは、自分の経験を詳細に記録して人格を再現する実験でもある。1日3000枚(年間100万枚)の写真を自動撮影して記録 現在5年分、これらを積み重ねて、そこから自分の記憶、行動様式をプロファイル化することで人格が再現できるのではないか? 人工知能によるディープラーニングができれば、それも可能になるかもしれない。

一方、心は脳のデータだけでなくそれらを結ぶネットワーク丸ごと別の記録メディアにコピーすることで再生できると主張する人もいる。コネクトーム(connectome:神経回路マップ)の再現ができれば人格も含めて別メディアに脳の情報を丸ごとコピーできるというのだ。 これは何百兆ものデータになるだろう。しかし、このマップは超高解像度スキャナーでスキャンでいることは確認済である。一方、データ量も、データの処理量も膨大になるため、現在のコンピュータ処理能力では到底厳しい。100年後に期待するべきプロジェクトなのかもしれない

 

リアル世界 アンドロイド

人格がコピーできれば、今度はそれを実人体として人や動物と接したいという欲望が出てくるはずだ。マツコロイドの生みの親としても知られる、石黒浩氏が開発している遠隔操作型アンドロイド「ジェミノイド」シリーズは、その第一歩になるのかもしれない。このアンドロイドに意識をアップロードできれば、世界中どこでも、さらに火星とかにも意識をアップロードして、安全でリアルな旅行体験ができるようになるのだ。

 

脳のデータ量

余談が過ぎたが、いったい人間の脳のデータ容量はどれくらいなのだろう? これまた確認方法がないのでいろいろな説があるが、一説によると4PBとも言われている。もしも世界中の人が永遠の命を手にしたいと考えたら? 75億人ともいわれる世界人口の全員の脳データの総和は、合計で30 Yottabytes (ヨタバイトと読む、Exabytesの1000倍) にもなる。こんな単位が普通に使われる時代もあまり遠くないところに来ているのかもしれない。

 

一般社団法人 電子情報技術産業協会(JEITA) テープストレージ専門委員会
日本ヒューレットパッカード(株) 井上 陽治
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