JEITAテープストレージ専門委員会コラム
「ビッグデータは本当にビッグになるのか?
2100年の予測からみてみる 」

 

最近発行されたGEのレポートは2100年を予測するものである。今から85年後というと遠い先のことで予測も困難かと思われるが、社会学や建築学、インフラや都市計画の見地から見ると、100年程度のスパンは長いわけではないのかもしれない。一方そこに住む人々の生活様式、データとのつながり方について、いくつか興味深い情報をピックアップしてみよう。

 

108兆の人口の84%が都市部に住む

UNによると、2100年には世界の人口は108兆人、その84%が都市部に住み、1000万人を超えるいわゆるメガシティーは、現在の28からさらに2ケタ以上増える可能性があるとしている。当然従来のメガシティーが2100年にも同じ輝きを維持しているとは言えない。気候変動による、海抜の上昇、熱波、台風などにより、都市機能が大きく変わる可能性がある。特に海岸部のNYや上海、東京も、今とは全く違った都市機能を果たしているかもしれない。

 

メガシティーではIoT,M2Mがますます多用される

当然このようなメガシティーでは効率的な生活インフラが求められる。多くの大手ITベンダーが、現在躍起になって都市インフラソリューションを開発しているのも、このような背景があるからである。ここでは、マシンインテリジェンス、自動化技術、それらをつなぎ合わせて、より快適で効率化の高い都市生活を実現することが求められる。2020年には500億のデバイスがインターネットにつながる(いわゆるIoT)と言われているが、この傾向はおそらく継続する、もしくは加速するだろう。平均で1人に10個がつながる計算である。すでにそんな人もいるかもしれないが、これが世界平均になるのである。

 

ライフログ - 人生全てをデジタルデータに?

さて、このようにインターネットにつながるもの、(センサーやカメラなど)が10個も体に搭載されるとどうなるだろう? もちろんウザったいというのもあるが、利便性はどんどん上がってくるので手放せない。中には自分の人生経験すべてをデジタルデータとして残そうという研究も始まっている。
Dublin City UniversityのCathal Gurrin氏は、2006年から1500万ものウェアラブルカメラのイメージや、1億もの外部センサーデータを保存してきている。これらを記録しておくことによって、いわゆるタイムマシーンのようなものもできる時代が来るのかもしれない。自分の行きたい過去を設定すると、自分の目線での画像と、衛星データ、気候データ、地図データや、多くの人々がアップロードした当時のその場所の写真や動画、当時流行っていた音楽などのデータから、極めてリアルな過去の体験ができるようになるだろう。
そのようなデータを集めるデバイスもこれから増えていく。Googleの最近の特許では、イメージ、ビデオ、オーディオを記録できる「グラス」で、特定の場所情報やユーザー設定によって、データがクラウドの「体験記録」データに記録されていくものが提案されている。個人的にはこれに匂いセンサーも付けてほしいところだ。「匂い」は記憶を呼び戻させる、大きなファクターと呼ばれているのだから。

 

AaaS - アーカイブ・アズ・ア・サービス

このように、メガシティー自体もさることながら、そこに住む人々のデータ量も今までの想定以上に増加し、さらには保存期間も100年以上、もしくはさらに長くというのが当たり前になるのかもしれない。それらを見越してか、ITベンダーからスタートアップまで、いくつかのアーカイブサービスが立ち上がってきている。これらはAaaS - アーカイブ・アズ・ア・サービスとも呼ばれているが、今後もこのようなサービスは増えていくだろう。そしてここでは、容量単価も飛躍的に安くなっていくことが求められる。フラッシュの価格低下もかなり早く、米調査会社Wikibonのデータでは、NANDフラッシュは年率-30%で価格が低下しているが、テープも-23%と予測されており、2023年でもその容量単価の差は10倍とみられている。一方HDDは年率-15%とNANDフラッシュとの価格差がかなり縮まるとの予測だ。

 

Unpluggedという選択肢

ここまで書いてきて矛盾するようだが、便利になる一方、人生すべてをクラウドに保存されるというのは、かなり抵抗がある。同様に昨年、エバンジェリストのコミュニティーで訪れた「スマートシティ」では、すべてが整然としていて「スマート」なのだが、なんだか息苦しい。聞いてみたらほとんどのメンバーが同意見。あえてつながらない、Unpluggedという選択肢も今後出てくるかもしれない。ただ、個人的にはしばらくハイブリッドでいきたいところだ。

 

一般社団法人 電子情報技術産業協会(JEITA) テープストレージ専門委員会
日本ヒューレットパッカード(株) 井上 陽治
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