JEITAテープストレージ専門委員会コラ
「ビッグデータは本当にビッグになるのか?
大容量低コストストレージの本命は!? 」
ストレージの世界で最近ホットな話題といえば、オールフラッシュとかソフトウェアデファインドストレージとかだが、実はもっと重要なものがあるのではないか?
2020年には40ZBになるとも言われるデジタルデータ、これをどのように保管していけばよいのか? データセンターの消費電力はもはや国家レベル、日本の総消費電力に匹敵しているのだ。 ポイントは、低消費電力、大容量/フットプリント(スペース効率)、低コスト(GB単価、今後TB単価で計算されることになると思うが)、セキュリティの4つだろう。
フラッシュとかは当分この分野には参入できないが、フラッシュに従来の座を奪われつつあるHDDや60年以上にわたりコンピュータと共に歩んできた記録メディアのテープ、コンシューマー市場で圧倒的な存在感のある光ディスクなどが候補だろう。それぞれの特徴と新しい技術をまとめてみる。
1.HDD
レイテンシー争いではすでにフラッシュの軍配が上がっているので大容量ストレージへの道を模索している。最近の技術は大容量化(高密度記録)がテーマだ。
1) | Heガス封入 -内部の空気抵抗を減らしたりすることでトラッキング精度を高めプラッター数を多くすることが可能 | |
2) | Heat-assisted magnetic recording (HAMR)ーレーザー照射でS/N比を上げる | |
3) | Shingled recording(瓦記録)-オーバーラップして記録することで容量を上げる |
いずれも課題が多いようにも思われるが、製品化もされている。しかし3)などは果たして従来通りのリード時のレイテンシーは確保できるのであろうか?また記録ヘッド技術も垂直磁気記録以降の見通しが不明瞭だ。コスト、スペース効率も改善していくことは間違いないが、テープとは平行線をたどるとみられている。
一番の問題は消費電力だろう。定期的にディスクの回転を止めるMAIDという技術もあったが、最近ではあまり聞かない。起動時の電力、モーターへの負荷と信頼性、そもそもアクセス時間がかなり伸びると思われるので、ランダムアクセスの利点が生かせなくなるともいえる。
2.テープ
実はテープヘッドはHDDヘッドの数世代前の技術を使っている。記録密度も2ケタの差がある。逆を言えばまだまだ伸びしろが大きいということだ。 実験レベルではすでに手のひら大のカートリッジに185TB相当の記録が可能であることも実証されているし、量産品では10TBカートリッジが発表されている。テープ市場のほとんどを占めるLTOも最近ロードマップが更新された。なんと第10世代では120TB(圧縮比2.5:1)まで記録できるのだ。ヘッド自体はまだGMRである。今後TMRという展開も考えられるし、メディアの磁性体の微細化、製造工程の改善等も見通しが明るいようだ。
容量コスト、消費電力はいう間でもなく他のメディアよりも優れているが、一番の特徴はオフラインにできることだ。電気代はかからないし、ハッキング、ソフトウェアバグ、オペミスに対しても最高のセキュリティレベルを提供できる。またカートリッジには精密なメカ、電気回路がないため、可搬性に優れる。1本を航空便で海外に気楽に送ることも可能だし、データセンターの大量なデータを一気に輸送することも可能だ。
3.光ディスク
コンシューマーでの量産実績から、製造技術は高いと思われる光ディスクは50年のメディア寿命と謳うが、パフォーマンスと容量が課題であった。パフォーマンスはカートリッジに入れた複数のメディアに並列に記録する方法で対応し、容量はトラック幅を狭める技術で対応していくようだ。ただし記録ヘッドに相当するレーザーの波長自体が変わる見込みは不明確だ。
50年の寿命もそれを読み出す機器が存在しなければ意味がない。クラウド間でデータ移行ができる技術、仕組みの整備のほうが重要になるだろう。
技術的な大容量化への将来の見通しはテープが優勢のようだが、HDDと光ディスクはアクセススピードでテープより優れている。ニアリルタイムアーカイブには向いているのではないか。しばらくは適材適所で3つのテクノロジーを使い分けるのが良いのかもしれない。
■お知らせ■当委員会はInterBEE2014に出展します。InterBEEにお越しの方は、ホール5の5408ブースまでぜひお立ち寄りください。
日本ヒューレットパッカード(株) 井上 陽治
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