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「ビッグデータは本当にビッグになるのか?輸送産業編」
2020年には40ZB(ゼッタバイト:エクサバイトの1000倍、ペタバイトの1,000,000倍)になるといわれるデジタルデータ。そのほとんどは非構造化データ、特にIoT、IoEとも呼ばれるセンサーデータとも言われている。しかし本当にそんな容量になるのだろうか?
今回は輸送産業、航空機、自動車の例から検証してみたい。
■航空産業
北米国内の代表的双発ジェット機の1年間に生成されるセンサーデータは1ZBと言われている。それもエンジン関係のセンサーのみである。これだけでもすでに40ZBの1/40になってしまうがこれは北米国内の数字である。さらに旅客数も北米、欧州、さらにアジアでも増加傾向で年率30%~100%とも言われている。
■自動車産業
いうまでもなく最近のトレンドは自動運転である。グーグルが自動運転カーを公表してから、各社堰を切ったように自動運転のCMをし始めたが、20年以上前、私が某研究所と共同研究しているときにはすでに道路の車線に追従して自動運転する技術が開発されていた。あくまでも研究レベルではあるが。つまり各社要素技術はあるがマーケットへの投入にはコストとインフラ、さらには社会とのコンセンサスが必要というわけである。
では自動運転によりどれくらいのデータが生成されるのだろうか? グーグルの自動運転カーは毎秒1GBのデータを処理しているといわれている。つまり一日走行すれば86,400GBつまり約86テラバイトである。世界の自動車販売台数は2018年に1億台規模になると予測されているが、これがすべてグーグルの自動運転カー並みのデータを生成したとしたら、なんと8.6ZBになる計算である。2020年にはどうなるのだろう?
■イノベーションのコモディティ化が加速する
もちろんすべての車に自動運転に必要なセンサーが取り付けられるわけではない。そう思われる方も多いと思う。しかし最近少し先端技術の導入形態が変わりつつあるように感じている。たとえば自動車業界の衝突防止機能などが良い例であろう。この機能、センサーと解析技術はそのまま自動運転に応用できるとも考えられ、当初からそれを見越した販売戦略なのかもしれないが、従来と大きく異なるのはこの最新機能を最初から大衆車に搭載したことである。従来は最新機能は部品コストとサポートコストがかかるために、フラッグシップモデルや高級ブランドのトップラインから導入されることが多かった。多少勇気のある判断だと思うが、最初に大衆車から搭載する戦略には大きなメリットもある。大量調達、大量生産によるスケールメリット、つまりはコストダウンである。それにもまして低コストでこのような機能を提供できるようになったのは、モバイルデバイスの普及に伴う画像センサー、プロセッサー、メモリー等の高性能低コスト化の影響が大きいのだろう。ドイツの高級ブランドAudiは高性能GPUであるNVIDIAを搭載し始めた。もはや車は移動手段だけではなくなるのかもしれない。クラウドの一部にもなりそうな勢いだ。
■空飛ぶ車?
飛行機、自動車ときたら次は空飛ぶ車。とても車には見えない空飛ぶ車の映像を目にした方もいるかもしれないが、いったい誰が買うのだろう? しかし最近の記事を目にして少し現実味を感じ始めてきた。
映画アイアンマンの主人公のモデルにもなったビリオネアー,テスラモータースのCEOにしてSpaceXを起業したことでも知られるElon Musk氏は最近雑誌のインタビューで、「空飛ぶ車を作る、あくまでも娯楽のためだが」と語ったとされる。面白いのは、課題は飛ぶことではなく、安全に静かに飛ぶことだということだ。結構現実めいて聞こえるが、彼ならそんなこともやってのけるかもしれない。
■センサーデータは捨て去られる?それとも。。。。
このようにセンサーデータは実際に大量に生成されそうだ、しかしながらすべてのデータを保存するわけではない。必要な情報だけ保存すればよいのだ。しかし誰がそれを予測できるのだろう? 特に新しい技術の投入には多くの実験データが必要である。マーケットに出てからもそれらのデータは非常に貴重である。本音を言うとできるだけ多くのデータを取っておきたいだろうがそうもいかない。データの保存にはそれなりのコストがかかるからだ。クラウドサービスにも非常に低コストのストレージサービスが登場し始めたが、それで間に合うのか?もしかしたらこれが今喫緊に取り組まなければいけない課題なのかもしれない。
日本ヒューレットパッカード(株) 井上 陽治
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