JEITAテープストレージ専門委員会コラ
「ストレージ仮想化でデータ損失は防げるのか?」
米国ミネアポリスのデータリカバリー、eDiscoveryの専門会社Kroll Ontrack社の調査によると、なんと80%もの企業が、データを仮想環境に置いておくことで、データ損失の危険性がなくなる、または危険性を低下できると考えていることがわかった。本来仮想化は、ITリソースの効率化、つまりは低コスト化になることはあっても、データ保護レベルが上がることを意図しているものではない。
実際に前述の調査対象で、仮想化を導入している企業の40%がデータ損失を経験しており、そのうちデータがリカバリーできたのはたったの33%というのである。何とも恐ろしい数字である。
ではデータ保護はどのように実現可能なのであろうか?以下に保護レベルを4つに分類して説明しよう。
【レベル1】
CDP(Continuous Data Protection)日本語では継続的データ保護、リアルタイムバックアップとも呼ばれる。
◆リカバリー時間:即時
◆保護可能範囲:装置故障
【レベル2】
スナップショット、クローン
◆リカバリー時間:秒~分単位
◆保護可能範囲:装置故障、データ化け
【レベル3】
リモートリプリケーション
◆リカバリー時間:分~時間単位
◆保護可能範囲:装置故障、データ化け、サイト破壊、自然災害
【レベル4】
テープバックアップやアーカイブによるオフサイトDR
◆リカバリー時間:時間~日単位
◆保護可能範囲:装置故障、データ化け、サイト破壊、自然災害、ユーザーエラー(オペミス)、ウイルス、ハッカー攻撃、ソフトウェアバグ
もちろん予算が潤沢であればレベル1から4までの全てを揃えるのが理想であるが現実的には以下の3つの指標でデータを分類し、いくつかを組み合わせて運用するのが良いだろう。
1.データの重要度
2.ダウンタイムのビジネスへのインパクト
3.コスト
例えば、データの重要度は極めて高いが、リカバリー時間はさほど重要でないコンプライアンス関連のデータであればレベル4だけでも問題ないと考えられる。一方、ダウンタイムが直接ビジネスにインパクトを与えるオンラインショッピングなどはリカバリー時間が即時であることが求められ、レベル1を選択することになるだろう。一般的にはレベルの数値が大きいほど保護可能範囲が増えるがリカバリーに時間がかかる。またレベルの数値が小さいほどコストが上がる傾向があるため、データの利用形態に合わせてそれぞれの組み合わせを選択することが重要である。これを機会に、一度データの棚卸をしてみてはいかがだろう。
日本ヒューレットパッカード(株) 井上 陽治
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