JEITAテープストレージ専門委員会コラム
「映像業界のデータ増殖」

 

 

初めて見たハイビジョンは忘れもしない25年前のプロトタイプ。その頃はMUSEとか呼んでいたような、、、。こんな高画質が実現できるのかと、今でもそのときの鮮烈な印象が脳裏に焼き付いている。

 

それから20年(きみまろじゃないですが)、デジタルテレビが普及して、フルハイビジョンでなくても十分だと感じたのは私だけではなかったと思う。映画館ででも見ない限り、フルハイビジョンじゃなくても十分だと思った。ところがまだまだ高解像度化への飽くなき追求は止まらない。2Kから4Kという話題が現実化を帯びてきている中、2012年8月23日には、日本放送協会(NHK)が開発を進める7680×4320 画素の「スーパーハイビジョン」(SHV)が、国際電気通信連合(ITU)により、次世代のテレビ放送システムの国際規格となった。

 

ハイビジョンの画素数は約200万画素、4Kはその4倍の約800万画素なのだが、スーパーハイビジョンはさらにその4倍となる約3300万画素になるという。これが2020年に試験放送を目指しているのだから、あと8年でデータ量は16倍である。

 

かたやキャプテンEO以来ぱっとしなかった3Dも今は当たり前。これまた製作の段階からデータ量が激増する。映画製作部門のIT担当者はそれだけの容量を確保しなければならないのだが、では3Dの映画製作でどれくらいの容量増加が必要になるのか? ここにひとつの例があるので紹介しよう。

 

日本でも2009年に公開された「モンエリ」こと、モンスターVSエイリアンはドリームワークス初の3D、主役のスーザン・マーフィーの声優をベッキーが担当したことでも話題になったが、その製作に必要だったディスク容量は93TBといわれている。これは過去の同社の映画製作に必要だった容量、25TBの約3.7倍である。単純に2倍とはいかないようだ。同社は、このモンスターVSエイリアン以降の作品は、すべて3Dで製作するとしていたが、今はほとんどのハリウッド作品は3Dだ。

 

このように高解像度化、3D化で激増するストレージ容量は常時同じストレージに入れておくことは無い。製作が完了すればそれは別のストレージ階層に移され、再利用のために長期に保管されることになる。さてどれくらいの期間保管したいのだろうか? 多くの業界関係者の答えは「半永久」だ。つまり映像業界で使用されるストレージ容量のアーカイブの割合は年々増加していくものと推測される。

 

ここに興味深いデータがある。Coughlin Associates の 2012 Digital Storage for Media and Entertainment Reportによると、映像業界で使用されるストレージ容量の出荷量は2012年で約22エクサバイト、これが5年後の2017年には約87エクサバイトになるという。このうちアーカイブの割合は97.7%になると予測。84エクサバイトがアーカイブデータだ。同レポートによると、動画データ1ぺタバイトを20年保存した場合のコストはディスクストレージを使用した場合$168万、かたやテープストレージを使用した場合は $72万と2倍以上のコスト差がある。このレポート、最後にはこのような言葉がつづられている。

 

"As our surveys show, the highest percentage of true archived content is kept on digital magnetic tape. The most popular digital magnetic tape format for archiving (based upon our survey) is LTO tape."

 

「我々の調査結果によれば、アーカイブコンテンツの多くは、デジタル磁気テープに保存されている。そのデジタル磁気テープの、アーカイブ用フォーマットで最も使われているのがLTOテープである。」

 

http://home.jeita.or.jp/is/committee/tech-std/std/com02.html

 

 


一般社団法人 電子情報技術産業協会(JEITA) テープストレージ専門委員会 (※)
日本ヒューレットパッカード(株) 井上 陽治
※:旧名称:磁気記録媒体標準化専門委員会