JEITAテープストレージ専門委員会コラム
「テープはクラウド向きか?最新テープ技術から読み解く」

 

 

大容量

最近では、手のひら大のテープカートリッジに5TB(非圧縮)ものデータが記録できるテープドライブがある。

T10000Cというドライブであるが、これはGMRヘッド、新しい磁性体の採用、さらには3584トラックを1/2インチ幅に記録しトラッキングできる技術により実現している。それでも面記録密度はHDDの2桁近く小さく、まだまだ大容量化の余地は十分にある。

もちろんデータ転送スピードも速い。32チャンネルヘッドの採用により15000回転HDDの速度よりも速い240MB/sを達成している。

余談だが、マルチヘッドのテープドライブの場合、転送スピードは容易に上げることができる。たとえばヘッドの数を倍にすれば転送スピードも倍になるといった具合にである。

当然コストも上がるが、HDDをマルチヘッド化するのよりは、はるかに安いと考えられる。

 

マルチテナント(multi-tenancy)

109に異なるショップが間借りしているようなものだが、展示商品から売上金に至るまで、すべてそれぞれのショップ毎にきちんと隔絶して管理されていなければならない。テープライブラリには論理的にパーティションする機能があり、さらには最近のテープドライブはカートリッジも複数のパーティションに切り分けることができる。LTO5は2パーティション、前述のT10000Cはなんと最大480パーティションまで可能だ。

ドライブのASICに内蔵されている暗号機能も、テナント間のデータセキュリティを確保する上でも有効である。暗号化はドライブ内ハードエウェアで行うため、性能が落ちることもなく追加コストもかからない。

 

スケールアウト(Scale-out)

スケールアウト性能とは、業務に支障なく、簡単に、すぐに論理容量が拡張できるというものであるが、まさにテープライブラリはこの言葉がぴったりなデバイスである。

カートリッジを追加してライブラリに入れるだけでよいのであるから、特別な変更作業などいらないのである。最近ではライブラリキャビネットが足りなくなったら自動的にメールが送られて、宅急便で追加キャビネットが送られてくるものもあるらしい。

またライブラリ内、もしくは複数のライブラリ群で構成されるパーティションも、特定の容量をプールしておくことで簡単に容量が変更できる。

 

それ以外にも当然コスト、データ保護の面ではテープにアドバンテージがあるが、少なくともテープはクラウドの世界でも、重宝なものであるのは間違いないようだ。

 


一般社団法人 電子情報技術産業協会(JEITA) テープストレージ専門委員会
日本ヒューレットパッカード(株) 井上 陽治