JEITAテープストレージ専門委員会「磁気記録の歴史とテープ技術の現状(その2)」
録画及び情報記録への応用
音声信号の記録・再生用に発展してきた磁気記録技術は、テレビジョン、電子計算機など電子工業の急速な発展に伴い、新たに録画、情報記録への応用分野が展開しました。
1948年頃から、ビング・クロスビー社(Bing Crosby Co)などで磁気録画の開発が始まり、1953年にはRCAによる実験機が公開されて、その可能性と実用価値が確認されました。
1956年には、アンペックス社(Ampex Corp)よりビデオ・テープレコーダ、3M社よりそれに用いるビデオテープが発売されました。
その後カラーテレビなどの進歩とカラー用ビデオテープに発展し、更にデジタル記録技術の開発により、テープの改良と磁気録画機の進歩により今日に及んでいます。
情報記録分野は、1947年頃から始まりました。
初期のころは、各種計測器からのアナログ信号を記録するのに用いられていましたが、1950年頃からデジタル電子計算機の記憶装置用として、実用され始めました、この記憶装置はテープの始動・停止が頻繁に行われ、データをテープに誤りなく記録させるためにforward/reverseとテープを繰り返し移動させますので、テープ走行機構はforward用キャプスタンとreverse用キャプスタンの二つのキャプスタンを設けて,キャプスタンとピンチローラでテープを挟んでテープを走行させていました、テープをミリセコンドの時間でスタート/ストップ走行させるので機構のタイミングが少しでも狂いますと、テープを両方で引っ張り合い不良にしてしまいます。
日本では、テープの損傷をなくすためにキャプスタンを一つにし、キャプスタン外周にテープを巻きつけたシングルキャプスタン方式の駆動装置(慣性モーメントの小さいキャプスタンと慣性モーメントの小さいモーターを直結し、モーターの急峻な始動・停止/正回転・逆回転によりテープを走行させる)を富士通㈱が考案し、1962年日本として初めて米国のコンピューターショウFJCC(Fall Joint Computer Conference)で製品発表、米国への初参加ということで拍手をもって迎えられました。
以後、シングルキャプスタンによるテープ走行や駆動方法の考えは広く活用され、多くの装置で用いられるようになりました。
これらの技術は急激な発展をし、各種計測器の高度化、電子計算機の高速・大容量化に寄与し、現在では半導体やデジタル記録技術の進歩で、テープ駆動装置の改良、テープの小型化と高記録密度化により、記録媒体としてのテープの信頼性の高さから、大量の磁気テープが用いられています。
参照文献:木澤誠・他(編)電子計算機利用者のための磁気テープ読本、東京、データ・ネット社、1969
(社)電子情報技術産業協会(JEITA) テープストレージ専門委員会
(株)トリム・アソシエイツ 竹内 正
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