JEITA磁気記録媒体標準化専門委員会コラム 「テープドライブよりエコなテープドライブ」
■ テープドライブよりエコなもの
テープドライブが、ハードディスクを始めとする他のストレージと比べ、省エネ性において優れたストレージであることは広く知られています。その一方で、最新のテープドライブが過去のテープドライブと比べ、省エネ性において有意に優れたストレージであることを意識している方は少ないのではないでしょうか?
ミッドレンジテープドライブの世界で圧倒的なシェアをほこるLTOテープドライブの消費電力低減傾向をご紹介することにより、みなさまに最新のテープドライブに移行することは省エネを推進するにあたり高い効果があることをご紹介したいと思います。
■LTOテープドライブの変遷
LTOテープドライブは、2010年3月1日現在、第4世代のLTOテープドライブ(LTO4)まで発売されており、間も無く第5世代のLTOテープドライブ(LTO5)も発売される予定です。各世代のLTOテープドライブが利用するテープメディアの容量と最大転送速度は表1のようになっています。これを見ると、世代毎に容量はほぼ倍増し、最大転送速度も20[MB/sec]ないし40[MB/sec]ずつ増加する傾向にあることが分かります。
LTO1 | LTO2 | LTO3 | LTO4 | LTO5 | |
容量 [GB] | 100 | 200 | 400 | 800 | 1500 |
最大転送速度 [MB/sec] | 20 | 40 | 80 | 120 | 140 |
■ 省エネ性の評価基準
ストレージの省エネ性を評価する場合、大きく二つの状態に分類することができます。それは、データの読み書きを行っている場合と、行っていない場合です。ここでは、データの読み書きを行っている場合に着目し、各世代のLTOドライブの最大転送速度を、読み書き時の消費電力で割った値 (単位は MB/sec per watt) を用いて比較することにします。これは、SAN/NAS関連では世界最大の業界団体であるStorage Networking Industry Association (SNIA)でも採用されている一般的な評価基準です。
■ 消費電力当たりの転送速度の推移
LTOテープドライブメーカー3社の第1世代LTOテープドライブ(LTO1)から第4世代LTOテープドライブ(LTO4)の消費電力当たりの転送速度を平均しグラフ化したのが図1です。比較しやすくするために、LTO1の値が1となるように各値を正規化しています。LTO4の値がおよそ9であることは、LTO4は同じ消費電力でLTO1の約9倍の転送速度を達成できる、つまり、一定の消費電力量で9倍のデータを読み書きできるということを示しています。いいかえると、一定量 (例えば1TB) のデータのバックアップを行うに当たり、LTO4はLTO1の約1/9、LTO3と比較しても約半分の消費電力量で済むということになります。
図1. LTOテープドライブの消費電力当たりの転送速度
■ まとめ
LTOテープドライブメーカー3社のLTOテープドライブのデータを使用し、LTOテープドライブの世代ごとの最大転送速度あたりの消費電力を比較することにより、1世代移行する度に同じ量のデータを読み書きする場合の消費電力量が半減することが分かりました。これはハードディスクドライブを始めとする他のストレージ利用者のみならず、すでに旧世代のLTOテープドライブを利用している場合であっても、最新のLTOテープドライブに移行することは省エネを推進するにあたり高い効果があることを示しています。
最新のテープドライブを利用することは、省エネの推進のみならず、バックアップ時間の短縮や、テープメディアの容量の増加など、様々な恩恵をこうむることもできます。みなさんもテープドライブの更新を検討してみませんか?
(社)電子情報技術産業協会(JEITA) テープストレージ専門委員会
日本アイ・ビー・エム(株) 大石 豊
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