JEITA磁気記録媒体標準化専門委員会からのお知らせ

2008年9月30日から10月4日まで開催されたCEATEC JAPAN 2008で、JEITA 磁気記録媒体標準化専門委員会として講演を行いましたので、今回は講演内容のご紹介をさせていただきます。講演タイトルは「地球環境にやさしいストレージとは?~テープストレージを取り巻く最新事情~」でした。
資料は、以下のURLからアクセスできます。
http://home.jeita.or.jp/is/committee/tech-std/std/com02.html
本文を読む前に、資料にアクセスしてみてください。

最初は当委員会の活動目的のおさらいです。本メルマガの読者の皆様はある程度ご理解いただいているかもしれませんが、当委員会はテープストレージのメリットなどの情報を提供することによりIT社会に貢献しようという活動をしています。ということで、今回もテープストレージの話になりますが、最後までお付き合いください。

次がIT業界を取り巻く三つの潮流です。ここで言う三つの潮流とは、情報の爆発的な増加、グリーン性、セキュリティのことです。  結論から申し上げますと、この三つに関しテープストレージはちゃ~んとソリューションを提供できるということです。 最近のテープストレージにあまり関わっていない方はぴんと来ないかもしれませんが、テープドライブは今後も大容量化、高速化が予定されていますし、それにあわせてテープカートリッジも開発が進められています。つまり、HDDに勝るとも劣らない性能を将来にわたって約束されています。

テープストレージは、テープの書き込み・読み出しをしていないときの電力消費量は微々たるものです。特に、アーカイブ用途でカートリッジにデータを保存しておくだけなら電力はほとんど不要です。ということで、テープストレージは今はやりのグリーンストレージにぴったりのソリューションということになります。ただ、何から何までテープストレージにしてしまうと、使い勝手が悪くなりますので、HDDと適材適所で棲み分けをして活用するのが効率的で且つ環境に優しいストレージになるというわけです。コンセプトは資料の方に説明がありますので、参照ください。   ユーザがデータ管理で重要だと考えているセキュリティについても、最近のテープドライブに搭載されてきている暗号化機能で対応できます。この暗号化機能により、他の機器を追加することなく、しかもデータ圧縮率や転送速度へ悪影響を与えることなくデータを暗号化してテープに書き込むことができるようになりました。このように、セキュリティへの対応もしっかりしています。

こうしてみると、テープストレージは現在のITの要求事項を極めてバランスよくカバーできていることが見えてきではないでしょうか。

こういったIT業界の潮流に対し当委員会では、暗号化、長期データ保存フォーマット、グリーンストレージ、テープメディア寿命といったテーマ毎にサブワーキンググループ(SWG)を立ち上げ調査・検討を行っています。その成果を啓蒙SWGが本メルマガなどを通して発信しているといった活動内容となっています。

各SWGの活動概要は資料20ページ以降を参照していただくとして、最後にデータテープメディア寿命評価について説明させていただきます。皆様もテープストレージが優れものだということをある程度ご理解いただいたと思いますが、それじゃあテープの寿命ってどうなのよ?といった疑問が出てきた方もいらっしゃるかと思います。我々テープストレージにかかわっていると、この質問を受けることが多くあり、今まではメーカー毎に個々の見解を説明している状況でした。テープストレージを盛り上げるにはこのままではまずいのでは?ということで、テープの寿命についての調査を開始しました。

実際に評価を行う前にまず、過去のテープ寿命に関する公式レポートや各社の寿命評価レポートを整理を行いました。その結果、最新のMP(メタル)テープは 30年以上の期待寿命があることが予測されていることが分かりましたが、デファクトとなりつつあるLTOなどの最新テープについては、公開できる寿命データがありませんでした。そこで、テープメーカー5社が同じ試験方法でLTO3のアーカイブ寿命評価を実施することになりました。

本寿命試験では、寿命推定で一般的なアレニウスプロットを使用しました。試験の細かい条件は資料の方を参照していただくとして、試験で使用した保管条件(55℃/80%RH 160日)は25℃で15年強に相当します。 結論は5社とも、160日保管後でも    1)データの読み出し(ハード的)な不良はなかった    2)エラーレートの顕著な上昇は見られず、ハードエラーが発生する一基準である初期値の100倍と比較し非常に安定していることが確認された。 これは、一度記録したテープを使用しないで保管していた場合の寿命になります。

どうでしょう、テープって結構長生きなのがわかっていただけたのではないでしょうか。保管条件を25℃と想定していますが、40℃を越すような高温になることがなければ、寿命が極端に短くなることはないと考えています。あまり保管条件に神経質になることはありませんが、温度・湿度、ゴミ・ホコリなど、人が不快にならないような場所で保管してあげてください。




(社)電子情報技術産業協会(JEITA) 磁気記録媒体標準化専門委員会
イメーション(株) 西田 博光