JDSF メールマガジン(2008年8月)
データセンター インフラの鍵となるデータセンターファブリック
JDSF 事務局 新井悠一
IT機器のグリーン化、IT要員の不足、ビジネスの急激な変化、IT投資の拡大、ビジネスのウエブ化、サービス化などなどの理由で、社会のコンピュータ資源は集約化の方向に向かう。平たく言えば個々の企業であろうが、公官庁であろうが、個人であろうが、多くのサーバやストレージなどは集約され、社会インフラとしてのデータセンターがたくさんできる。事実巨大なデータセンターの構築が各所で進んでいる。データセンターはある程度大きいほうが効率がよい。大きければグリーン化の効率が上がり、IT要員のスキル稼働率も上がるし、IT機器の稼働率も上がる。機器の稼働率を上げるためにサーバやストレージ、ネットワークの仮想化技術が花盛りである。
一方、今まで異種と考えられてきたネットワーク機器を統合させる技術も登場し、その一つがLAN(イーサネット)とSAN(ファイバチャネル)のルータースイッチを統合するものである。LANとSANはプロトコルが全く違う。そこで広く使われているイーサネット上にファイバチャネルプロトコルをマッピングする技術が、以前本コラムでも紹介したFCoE ( Fibre Channel over Ethernet)である。LANとSANのスイッチやルーターを別々に設置するより統合化したほうが機器も、ケーブルも、アダプタも節約でき効率的であるという理由だ。これもハード機器の稼働率を高める。
ざっくり言えば、大きなデータセンターで消費する電力の内、IT機器が1/3、冷房が1/3、その他UPSやAC-DC-ACなど変換ロスや伝送ロスが残りと言われる。したがってIT機器の消費電力を減らすと全体への効果も大きい。
いろいろと問題はあるがGreen化の要請とIT人口の問題、さらにサービスの低廉化を考えるとこの流れを阻止することは出来ないであろう。ビルなどを除けば、データセンターの運用には①IT機器、②制御・管理などのミドルウエア、③アプリケーション、④サービス提供者の4者が絡むが、データセンターインフラという範疇に限ると、ハード機器とミドルウエア部分の機能の整合性は重要である。このことは単にデータセンター内の機器やソフトの問題に限らず、業界が大きく再編されることを意味すると思われる。
こんなことを書いていたら7月21日にSANファブリックのブロケード社が、LANのファウンダリー社を買収するというニュースが飛び込んできた。ブロケード社はファウンダリー社のネットワーク技術と、先に買収したファイバチャネルHBA技術などを統合して、サーバやストレージの物理接続を一体化しシステムの管理・監視を一元的に行うという、同社のデータセンターファブリック構想を具現化するであろう。
先行するシスコシステムズ社は同社のNexusシリーズにLANのCatalystとSANのMDS技術を統合化しデータセンターの核に据え、サーバやストレージを総てこのバックボーンを中心に接続しようと考えている。IB(インフィニバンド)スイッチのTopSpin社も買収済みであるから少なくとも管理監視という観点ではIBも包含したシステムを製品化してくるであろう。シスコ社ではVframeDCアプライアンスを統合監視のミドルウエアとして製品化し強化してくるが、正にこのミドルウエアが各社勝負のしどころである。
一方サーバベンダーはブレード化を中心に統合管理・監視で囲い込みを進める。今回はネットワークファブリックに焦点を当てたが、ネットワーク機器ベンダーやファイバチャネルHBAなど周辺機器ベンダーなどが、今後どのような生き残りを図るか目が離せない。最終的にはデータセンターを自動化し最適運用していくために誰がその要を握るかは興味が尽きないが、いずれにしても各社が各レイアで相互接続性を確保して、最終ユーザやシステムインテグレータに選択に余地を残しておいて欲しいものである。
以上