●○ 最近のテープ関連記事と並置の思想 ○●
近頃、テープに関する記事が目につく。
まず、目に入ってきたのが、 「データバックアップマネジメント戦略:テープバックアップとディスクバックアップの組み合わせ」だ。http://bit.ly/cP3SLZ
バックアップのメディアはディスク全盛になったけど、まだテープは健在で両者を上手く使うのが吉、という出だしだが、ディスクとテープの比較表を見ると...
「テープは以前に比べて信頼性を増したが、いまだに消磁に弱くテープドライブに『食べられる』(巻き込まれる)弱点を持っている」
というコメント。いやはや、これではテープ使うのをためらってしまう。 「消磁に弱く(vulnerable to demagnetizing)」? 経時変化による磁気の消失を言っているのだろうか?
テープに詳しい理事に聞いたところ、
「磁気の経時変化についてですが、HDDに使われる磁性材よりは保持力が低いので、理論上は外部からの影響は受けやすいことになっていますが、現実問題そのような高磁力は磁力発生装置(イレーサー)でもなければ発生しませんので、テープが特異的に弱いことはありません。
磁気は非常に安定していますので、磁性材(MP)が錆びない限り半永久的に消えることはないはずです。
HDD/Tapeとも同じです。
テープのジャミングは、DDS/DAT、8mmなどの2リールタイプ(ヘリカルスキャンタイプ)で、古いドライブや汚れたドライブで使用しているとたまに発生してます。
LTOなどシングルリールタイプでは、ジャミングの報告はほとんどないですね。」
この記事の筆者の履歴をみると、病院や陸軍などに勤務していたということなので、実経験に基づいているのだろうが、かなり以前のことではないだろうか?テープは随分進化しており、以前のテープに対するイメージで語るのは誤解を招く。
一方こちらは、Mr. BackupことW. Curtis Prestonのブログ記事、
「昨年度のテープ売上25%減、しかし...」http://bit.ly/aMxScc
この中で、氏は売上減の原因は、バックアップの対象となるディスクの売上減とテープ容量増大による必要巻数の減少だ、と分析する。
それ故、この数字(減少率25%)が「みんなが考えがちな、テープからディスクへの大移動を表しているとは思えない」とバッサリ。
さらに、Mr. Backupのブログからもう一記事。
「テープは重複排除ディスクよりどれだけ安いか?」http://bit.ly/dm22R5
で、氏は重複排除(De-dupe)がいろいろな面で優れているのは分かっているが、テープに比べて高すぎる、とこれまた直球発言。
JDSFで以前、ディスク対テープのパネルディスカッションを行ったことがあるが、「適材適所」がJDSFの基本スタンス。総合得点で低い方は市場から消え去るべき、とは考えない。
ここで、最近読んだ本、「ぼくたちが聖書について知りたかったこと」(小学館)の一節を思い出した。
「対立したものをそのまま並置する古代ユダヤ人」という章で、対談者の秋吉輝雄氏が、「ユダヤ教の場合、聖書と並ぶ聖典、『タルムード』という口伝律法書がその典型なのですが、ある事柄について、だれそれはこう言っている、だれそれはこう言っているという対立意見が綿々と書かれていて、まさに厖大な海のようにとらえどころがなく、どれが正しいかは決められないような作りになっています。(中略)こうした考え方は、ギリシャ・ローマ的なものとはまったく違っていて、対立するものをあくまでも並置していく。これがヘブライ語、アラビア語、セム語の世界です。だから、イスラームでも、シーア派とスンニ派は、分かれていくのが必然なんです。それを強引に一つにしようというのはちょっと無理だと思います。戦前の日本のように皇国史観によって、一つにまとめるとか、デモクラシーという概念ですべてをまとめるとか、そういうものではないんです。」と語っている。
どのソリューションが最善でそれ以外はクズ、邪道、という原理主義的な考え方より、この環境ではあれもよし、あの状況ではこれもよし、とする並置的な発想の方が、結局はベンダーもユーザも得するのではないだろうか。
株式会社マトカテクノロジー
池田 c孝
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